第41話。変人と七夜の技。
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人間が魔や混血にかなうわけがなく、生粋の魔とは相性が悪い。
故に単純戦闘では分が悪い。奇襲こそが七夜の極意。
八点衝と言う技は所詮威嚇でしか過ぎない。そう、威嚇でしか過ぎない。
スッ・・っと斬撃が止んだ瞬間七夜が消える。
「ッ!?・・グッ!」
ナイフの切先から向けられていた、溢れんばかりの殺気が突然消え、戸惑いを見せた晋吾は、首に衝撃を感じ驚愕を抱く。
七夜はニヤリと再び表情を歪ませ。全体重をかけ、地面に叩きつけようとする。
咄嗟の判断で晋吾は自ら飛ぶ。
そして、足をめいいっぱい伸ばし、オーバーヘッドキックをするように七夜の後頭部を蹴りつけた。
バランスを崩した七夜は飛び退く。
晋吾は地面に叩きつけられたが、すぐさま起き上がる。
「・・・・流石七夜。と言ったところかのぉ。」
目で追えない訳ではない。完璧なる気の抜き、そして単純だが洗礼された上下の動きにより、見失う。
流石、七夜。流石、暗殺者。
剣道場のおっちゃんが言っていた『相手を認める事から武が始まる』って言うのはこのことかね。
今までは相手を見れなかった。
剣道場では如何に手加減するか。死徒との戦いでは如何に力を振るうか。
相手を考えて居なかった。いや、相手は居なかったのだ。ただ力を振るうだけですんだ。
相手を見る。七夜がニヤリと顔を歪ませる。
頭の中にスッっと風が吹いた気がした。晋吾は柔らかな笑みを浮かべていた。
「うがー。今日は月が雲で隠れてるわ。」
カラカラと何かを引きずり歩く少年が一人。空を見上げて呟いた。
やってられんね全く。
フラフラと少年は歩く。
「なんだこのガキ?」
「うぉ!?釘バットだぜ!」
「うわぁマジで!?」
品の悪いガキが数人。品性のカケラもない。
とりあえず潰そうと思った。
ブゥウン!ボグゥシャアア!ブゥウン!ボグゥシャアア!ブゥウン!ボグゥシャアア!
「・・・・」
人はなんて悲しい生き物なんだろうね。
生の感情を剥き出しに、欲望のままに怠惰な日常を生きている。このような人類に、可能性はないに等しい。
『リセット』はできない。仮初の自分にそこまでの力はない。
ならば少しでも効率化を図った方がいい。少しずつ自分の手で・・・・
「待ちどうしいのぉ」
自分に会いたい。あの可能性に溢れていた自分に。可能性を信じていた自分に・・・・
「まぁ、眩しすぎて・・殺したくなるかも知れへんけどな。」
ボソリと呟いた言葉は、月の光も届かぬ闇に消えた。
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