第六話
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向ける好意? それとも、もっと違う好意?
なぜ好意を抱いているのかわからないし、それがどの好意なのかもわからない。
だが、彼女と一緒に過ごすこの空間は、この時間は、何故か深い安心感と居心地の良さを覚えた。
まるで二つのピースが合わさったかのような、カチッとピッタリ嵌ったかのような感覚。
リーラの笑顔を見ると胸が熱くなり、鼓動が早くなる。
彼女に俺のすべてを曝け出したい。そんなどうしようもない衝動に駆られることもあるくらいだった。
――閑話休題。
まあ、ともかくそんな理由もありメイドさんたちの主になってもいいかなー、と思っちゃったりしてるけど、いまいち踏ん切りがつかない。
誓約は明日の二十時。今は午後の十時だから残り二十二時間しかない。
なにか切っ掛けがあればすんなりと受け入れられるようなそんな感覚がいつまでも俺の中を蝕んでいた。
窓越しに見える満月を眺めていると、コンコンとノックの音が鳴った。
「どうぞ」
「失礼します」
恭しく頭を下げて現れたのはリーラだった。
「眠れませんか?」
「そりゃあね、なにせ明日だから」
背後まで歩み寄ったリーラは俺の視線をたどり、満月を見上げた。
「はい。明日、わたくしたちは正式に式森様のメイドになることができます。警戒中ゆえ簡素な式になってしまいますが、お許しください」
「いや、いいよ」
満月から視線を切ったリーラが俺の顔をジッと見つめた。
「……今宵は客人としての最後の夜になります。なにか御用はありますか?」
「特にはないかな。すぐに寝るつもり」
「そう、ですか」
リーラは身を屈めると俺と目線を同じくする。
心なしか、距離が近い感じがした。
「なにかそのお心に躊躇いがあるように思います」
「躊躇い、か。……そうだね。うん。少し躊躇ってる」
心は大分固まってきているのに、今更なにを躊躇うというのか。
自分の心なのに自分でもわからない。
「確かに、今のご主人様にせよわたくしたちにせよ、式森様を後継と定める方法に強引なところがございました。深くお詫びいたします」
「……うん」
「ですが、これも根拠があってのことです。ご主人様が東京支部の報告書を読んだとき、頭にひらめくものがあったそうです」
「ひらめき?」
「はい。式森様の胆力、精神力、行動力、決断力、それらはメイドの主としてふさわしい姿であり、理想の姿。そして、女性を苦手にしているところや、周囲に流されず己を保持していると
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