第六話
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である。素顔どころか肉声も知らないのになぜこのような目を向けることが出来るのか。
疑問に思った俺はメイドの一人に聞いてみた。
「確かに私たちは式森様のお顔もお声も、見たことも聞いたことはありません。しかし、私たちメイドにとってそれは些細なことなのです」
「というと?」
「ご主人様がお選びになった正統後継者の方、それもあります。ですが実は私たち、少しだけ式森様のことを知っているんです」
後継者としてふさわしいかどうか、あらかじめMMMのほうで人物調査が行われ、少しだけ俺という人物を知っているのだという。
その調査報告書には普段の俺の生活や、裏の顔の姿も報告されているのだとか。
勝手に身辺調査を行ったことに対し謝罪をしてきたメイドに頭を上げるようにいう。
「でも、それだけのことで?」
「もちろんこれだけではありません。実際に式森様に会うまで不安はありました。ですが、式森様の姿をお目にすることが出来てその不安はもうございません」
彼女は向日葵が咲いたような明るい笑顔を浮かべた。
「私たちはメイドです。人を見る目には自信がございます。お顔を見ることが出来なくても、お声を聞くことが出来なくても、式森様は優しく誠実な方だというのがわかったからです。そしてなにより、貴方様の纏う空気はとても優しく居心地がいい。日々激務に追われる私たちメイドにとってそれはとても魅力的なんですよ?」
くすっと悪戯っ子の笑みを浮かべ、小さな唇に人差し指を当てた。
「それが、私が式森様を主として認めお慕いしている理由です。恐らく私と同等な気持ちを抱いている子も多いでしょうね。覚悟してください、正式に私たちのご主人様になったらもっともっと好きになる自信がありますから!」
そう言って頭を下げた彼女は軽い足取りで廊下を去っていった。
一人残された俺はしばらくポカンとしていたが、後に沸き起こってきた気恥ずかしさに身を焦がれ、自室に戻ってベッドにダイブした。
そんな経緯もあり、彼女たちを受け入れる心が出来上がりつつある。……少し、俺ってもしかしてチョロイ? と思わなくはないが、それは全力で無視だ。
そして、もう一つの大きな理由は一人のメイドさんの存在だ。
そう、リーラである。
なぜかわからないが、彼女に惹かれる俺がいる。それを自覚したのは彼女と出会って直ぐのことだった。
昨日、一日を通してリーラに場内を案内してもらい、それが確信に変わった。
なぜ、こうも惹かれるのか?
そもそもこの気持ちはなんだ?
好意、なのはわかっている。異性に対する好意? 家族に
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