SAO編
第一章 冒険者生活
4.違和感の正体
[9/13]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
減っていました。敵が二十匹を切った辺りからは殆んどHPも減っていなかったし、なによりキリュウさんのHPが五割を切ったときに「一旦後退してHPを回復して下さい」と言ったけど、「この戦いが終わるまでは大丈夫だ」と言って臆しもせずに戦闘を続けていました。
そんなキリュウさんが、もうすぐ倒し切るというタイミングで戦場を離れるでしょうか?
これまで一緒に居た私には――いえ、私たちには考えられないことでした。
「おいっ、アイツはどうした!? 何処行ったっつぅんだっ!?」
リックさんの少し困惑したような怒鳴り声が聞こえました。
キリュウさんが居なくなったことで、モンスター七匹を同時に相手をするようになったリックさんのPT。いきなり対処する敵が増えたことに戸惑っているようですが、元々格下のモンスターたちなので今のところは大丈夫そうでした。
「も、もしかして、逃げたんじゃ……」
リックさんのPTの一人がぽつりと呟いたのが耳に入りました。
その言葉に、私は何時に無くカッとしてしまい、つい叫んでしまいました。
「――っ、キリュウさんは逃げたりなんてこと絶対にしませんっ!!」
「う……」
その人を睨む私、そんな私を戸惑うように見てくるその人。辺りに一瞬だけ気まずいような雰囲気が漂いました。
こんなに大きな声を出したのは――しかも、奈緒や佳奈美以外の人のことで――初めてで、私自身内心はビックリしていました。
「レイア! 敵っ!」
「……え?」
突然のネリーの声に我に帰ったた私の目の前で、キリュウさんからタゲを外した亜人型モンスターの一匹がソードスキルのモーションに入っていました。
――しまっ……!?
今からではソードスキルを妨げることも避けることも出来ない。私は剣をソードスキルの予測軌道に置いて、被害を減らすことを優先しました。
「やあああ!!」
「えりゃ――ッ!!」
身構えた私に敵の攻撃が当たる寸前、モンスターの左右からネリーとチマのソードスキルが炸裂し、敵はバリィィンと音を立てて砕け散りました。
「あ……二人とも、ありが――」
「レイア! ぼーっとするのは後! 今は敵を倒すことだけ考えるよっ」
「そうッスよ! キリュウさんは《此処は任せる》って言ったんスよ!?」
「……あ」
二人は、私が言おうとした言葉を遮って、怒鳴ってきました。
――そう……。確かにそうだった。
キリュウさんは、私たちに《此処は任せる》と言いました。つまり、あとは《私たちだけで対処出来る》と、そう思ったのではないのでしょうか。
「……だとしたら」
だとしたら、それに応えるのが今まで鍛えてきて貰ったことに対する礼儀なのではないか……と、そう思いました。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ