SAO編
第一章 冒険者生活
4.違和感の正体
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雰囲気に呑まれていた者たちの意識を此方に向けることは出来た。後は、《あれ》に立ち向かえるだけの理由だ。
無理不可能と思わせるな。可能と思わせろ。
俺は仲間の士気を上げるため、口を開いた。
「…………予想よりも、敵の数が少ないな……」
しかし、俺の口から出てきたのはそれだけだった。考えるのは簡単だが、俺のような口下手にとっては言葉にする方が難しいようだ。……むぅ。
「は? ……はあああ!?」
俺の後ろから、呆れたような叫び声が聞こえる。……確かに。自分でも呆れるような台詞ではあったと思う。
「……よく見てみろ。モンスターの数は五十よりは多いかもしれないが、明らかに百も居ない。左右の門のどちらに来るかは解らなかったが、分散している可能性が高いな」
だが後悔している時間も無い。モンスターたちは今も尚近づいて来ているのだ。
「……ん、じゃあ、クラウドたちが守ってる門の方に残りが行ったっつぅのか?」
赤い長髪の男、リックさんが訊いてくる。俺は振り向かずに答えた。
「……それ含めて先ほどメッセージを送ったが……今、返信が来た」
電子音が鳴り、メッセージが届いたことを知らせた。俺はすぐに開いて読む。
『こちらも同じだ。数も百匹はいないみたいだ』
先ほどメッセージを送った一人、クラウドさんからの返信だった。ジョーストさんからの返信は未だ無い。
「……む、向こうにもどうやらモンスターが現れたようだが、どうもその数も百匹は居ないらしいな」
言いながら『了解。健闘ヲ祈ル』と返信をした。
――しかし、どういうことだ? NPCから得られる情報の信用性は思ったほど高くは無いというのが最近の認識だが。……何処か違和感が残るな。
モンスターたちとの距離を計算しながら、俺は答えが出そうで出ないような歯がゆい感覚を味わっていた。
「…………いや、今は目の前の事が優先だ」
軽く首を振り、誰にも聞こえないほどの小さい声で呟いた後でモンスターを睨む。
「ルネリー! レイア! チマ! 来るぞっ……交戦準備!」
「!? ……ひゃ、ふぁいっ!」
いきなり呼び掛けた俺の声に、舌を噛んだ様な返事が聞こえた。
――落ち着け。いつも通りやれば問題は無い。
心の中で三人と自分に言う。俺は言葉は苦手だ。故に……行動で示そう。
「……お前たち、《作戦D》で行く」
「え? あ、了解ッス!」
「は、はいっ」
「わかりましたっ!」
何とか返事をした、という様子の三人の声を確認して、俺はもうすぐ石橋に差しかかろうとしているモンスターの群れに向かって槍を脇に抱えるように持ちながら地を蹴った。
ギー! グオー! ギャー!
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