オリジナル/未来パラレル編
第8分節 状況終了
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と話したい。でも記憶喪失ですなんて、どう説明したら)
握りしめたスマートホン――に、重なるように、色違いの筐体を幻視した。
“今日は記念日だろ。何か特別なことしたいじゃんか”
“お揃い、だな”
携帯ショップのディスプレイに並ぶたくさんの筐体。腕を組んだ紘汰と二人で選んだ。
(そう、だ。これ、紘汰くんが。付き合って……何年だっけ。とにかくその記念日だから、どうせ買い替えるなら一緒の買おうって。二人でショップ行ったんだ)
「――咲!!」
顔を上げてふり返る。客席のベンチを紘汰が息を切らしながら降りてくるところだった。
咲は立ち上がって迎えた。
「よかった、見つかって」
「どうして分かったの? あたしがここにいるって」
「咲は落ち込んだりするとよくここに来るから」
紘汰は荒い息もそのままにニカッと笑った。――拒絶した咲なのに、こうして迎えに来て、笑いかけてくれる。
「――ねえ。あたし、ケータイ機種変した?」
「ん? ああ、去年……」
「紘汰くんと一緒にショップ行って、機種おそろにした?」
「!! 思い出したのか!?」
紘汰は咲の両肩を掴んだ。その顔色は喜びより恐れのほうが強く見えて。
「う、ううん。このケータイのこと、だけ」
「そっ、か」
紘汰の両手が咲の肩から離れる。代わりにまた手が差し出された。
「ゆっくりでいいよ。一気に思い出すと、咲ちゃんも苦しいかもしれないんだから。のんびりやろう? な?」
咲は手を差し出し返す。紘汰の掌に触れて一瞬びくついたが、勇気を出して手を預けた。
握られた手の力は弱く、いつでも咲が振り解ける力加減。
「帰ろう。姉ちゃんとザックが心配する」
肯いた。歩き出した紘汰に手を引かれるまま、咲も歩いた。
最初はどうして21歳の自分と彼が恋仲になったか分からなかった。でも、今なら分かる。
少なくとも21歳の咲が紘汰を想った訳は、自覚12歳の咲でさえ分かるほど分かりやすかった。
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