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嘆き
第一章
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は述べる。
「それは無理だったようです」
「特のある僧侶であっても人は人」
 今度彼が言ったのはこれであった。
「それを考えればこれも当然か」
「当然ですか」
「人は所詮思いから離れられん」
 こうも言う。
「法善殿であってもな」
「弟子を失った悲しみから逃れられませんか」
「そうだ。問題はだ」
 ここでまた言う信綱だった。
「これだけではないのだ」
「これだけではないというと」
「そうだ。最早法善殿はあれだな」
 信綱はまた言葉を出す。
「御命も短いのだろう」
「元々高齢の方でありましたし」
 側近はそれに応えてまた述べる。
「やはり。御身体が弱っておられて」
「嘆きをどうしても抑えられずだな」
「その通りです」
 側近はこのことも信綱に述べるのだった。
「嘆きに嘆かれ。飯も喉を通らず」
「左様か」
「御命が尽きるのも時間の問題です」
「いかんな」
 ここまで聞いて信綱は。心を押し殺したようにして言ったのだった。

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