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《SWORD ART ONLINE》〜月白の暴君と濃鼠の友達〜
眠り姫
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胎児のように丸まって眠るその姿は、普段の横暴な態度を毛ほども感じさせなかった。
未だかつてないほどの警鐘が、頭の中でガンガンと鳴り響いた。これを危機と言わずして何というのだろう。自分はよりによって熟睡中の彼女の部屋に、無断でズカズカと入り込んでしまったのだ。
理性は今すぐ退出しろと喚いている。だがジロウは、魔法にかかったように彼女から目が離せなかった。完璧な美貌に不似合いな、子供っぽくて柔らかそうな頬っぺた・・・・・・
夢遊病者のように手を伸ばしたジロウは、あろうことか彼女の頬を指先でつついていた。
ぷにっ。
この世の物とは思えないほど柔らかい感触が伝わり、思わず顔が綻ぶ。ここで止めておけば良かったのだが、ジロウは彼女が寝ているこを良いことに、何度も何度もその頬をつついた。
ぷにっ、ぷにっ。
ぷにっ、ぷにっ、ぷにっ。
ぷにっ、ぷにっ、ぷにっ、パチッ!
……ぷにっ?
不意に違和感を感じて、ジロウは訝しげに指の動きを止めた。
「……うぅん。な、……なぁに?」
次いで可愛らしい寝ぼけた声が聞こえて、ジロウは背中に氷を押しつけられたような寒気を感じた。恐る恐る視線をずらすと、大きくて、曇天を思わせる青灰色の瞳と目が合う。瞬間、ジロウは全てが終わったことを悟った。
屋敷の主である彼女は、まだ意識がはっきりしないらしく、視線がジロウの顔と、自らの頬にぐっさりと刺さった指の間を行き来した。
次第にその表情が強張り、瞳がきりきりとつり上がっていく。今、彼女がどういった心境でいるのかは想像に難くない。薔薇色の頬が、何かしらの感情をたたえて真っ赤に染まる。
「……や、やぁ、セレシア。おは、よう?」
語尾に疑問符がついたのは、それがこの場面で言うべき言葉なのか迷ったからだ。冷や汗を流しながら、引きつった笑みを浮かべるジロウを尻目に、脳内の小人が謎のカウントダウンを始めた。
……3、……2、……1
彼女がすぅっと息を吸い込む。
……0
「なぜお前がここいるーーーーーーーーーーー!?」
その絶叫は美しい少女から発生し、屋敷を震わせ、第十層の大地に伝わり、《アインクラッド》全体に聞こえたのではないかと思えた。薄い桜色の唇から、二本の犬歯がキラリと除く。小さな眠り姫ーーセレシアは激怒していた。
ジロウと言えば、あまりの剣幕に尻餅をつき、ガタガタと震えるしかなかった。
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