第七章
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第七章
「何ていうかドス黒いな」
「そんな顔だよな」
「全くだよ」
「犯罪者そのものの顔じゃねえか」
その顔は実際にかなり歪んでいた。悪魔の如く。
「最初は謙虚で二枚目だったんだけれどな」
「変わったってわけだな。悪くな」
「顔に出るんだな」
彼もまたこのことを言われるのだった。
「人間って生き方がな」
「ああ、そういやそうだな」
「悪事する奴ってな」
「人相悪いな」
松村とは全く逆であった。
「じゃあよ、こいつ訴えようぜ」
「ていうかあの知事訴えたし」
「ホステスも犯されたって刑事告訴してるぜ」
「地検もな」
全て悪事が明らかになった結果だった。
「じゃああいつも終わりだな」
「ああ、終わりだ」
「鳥越御臨終、と」
せせら笑われる始末であった。
実際に彼は番組の降板どころか数件にも渡る性犯罪や横領、そして脱税容疑で訴えられた。実刑は間違いなかった。そして松村はというと。
「お子さんが生まれたんですね」
「そうなんですよ」
祝福の報道に笑顔で応えていた。
「いや、これがね」
「おめでとうございます」
「有り難うございます」
キャスターに対して笑顔で応えていた。
「やっと僕も父親ですよ」
「男の子ですか?女の子ですか?」
「男です」
満面の笑顔での言葉だった。
「僕にそっくりな」
「あっ、それはいいですね」
そしてキャスターもそれを聞いてこう言うのだった。
「松村さんにそっくりですと」
そして彼は言った。
「いい顔ですからね」
「いやね、僕なんか本当に」
しかし松村は謙遜して言う。
「こんな不細工で。子供には悪くて」
「不細工なんかじゃないですよ」
しかしキャスターはそれは否定した。
「もう全然」
「そうですか?」
「はい。不細工なんてそんな」
キャスターは完全にそうではないと言葉に出していた。
「物凄くいい顔なのに」
「いい顔なんですか」
「そうですよ。特に笑顔が」
その笑顔を指摘する。
「凄くいいんですよ。見ていて癒されるっていうか」
「はあ」
「やっぱり人柄が出るんですね」
松村の顔をじっと見ての言葉であった。
「顔にちゃんと。生き方とかも」
「そうなんですかね」
それを言われても当人は首を捻るだけであった。
「顔にそういうのが」
「そうですよ。ですからお子さんも」
その松村の子供についても言葉は同じだった。
「いいお顔になりますよ。松村さんのお子さんですから」
「有り難うございます」
最後までいい笑顔の松村だった。やはり彼は誰からも愛されそれに相応しい顔をしていた。そして同じ頃鳥越は数々の犯罪行為で遂に逮捕された。その時の顔はまさしく犯罪者のそれであった。やはり顔に何もかもが
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