第五章
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第五章
「見ろよ、失業率だってな」
「悪化してないよな」
またデータが出されて述べられた。
「あと孤立っていうけれど色々な国と付き合いあるだろ」
「全然孤立じゃないよな」
そのことも見破られたのだった。
「格差もほれ、狭まってるぞむしろ」
「赤字も何か収入と比べて減ってるよな」
レトリックまで明らかになってきた。
「額は増えてるけれど割合は減っている」
「じゃあ問題ないよな」
「あいつ全部嘘ついてたのか!?」
そして遂にこの結論が出されたのだった。
「それで視聴者騙していたのかよ」
「何て野郎だ」
「屑かよ、あいつ」
ネットでは次第に彼への不満、いや怒りが噴出してきていた。それに対して松村はどうかというと。テレビで相変わらず必死に動いていた。どんなことでも懸命に努力した。それが皆から愛されて親しまれるようになってきていたのである。
「何か顔悪いけれど好きなのよね」
「人柄がいいからね」
その人柄がかなり有名になってきていた。テレビの中でも外でも優しく真面目なので共演者達はおろかスタッフや視聴者からも好かれていたのだ。贅沢な遊びもせず生活も質素で堅かった。趣味はラジコンやプラモデルでそれを聞いたファンからの差し入れもあった。
「昨日ですね。欲しかったラジコン、貰ったんですよ」
「貰ったんですか」
「はい、そうなんですよね」
少し癖のある喋り方であるバラエティ番組でにこにこと話していた。歯茎が見え、一緒に歯並びの悪い歯も見えているが今ではそれがチャームポイントだと言われている。
「ファンの方から」
「あっ、それはいいですね」
「もう最高ですよ」
そして純粋に満面の笑顔で言うのだった。
「こんなの貰っていいのかなあって。僕は幸せですよ」
些細なことだがそれで幸せと言うのだった。そんな彼だから人柄に惚れて事務所の後輩達が慕う。しかしそれでも彼はあくまで謙虚で彼等に対しても優しく怒ることもなければ威張ることもない。そして遂には結婚まですることになった。
「お相手は?」
「いや、ちょっとですね」
インタビューにも照れながら答える。
「まあ事務所のスタッフの人で」
「事務所のですか」
「はい、その人と結婚することになりました」
こうインタビューに答えるのだった。
「おかげで。僕なんかを選んでくれて」
「それでお相手の方は松村さんの何処がいいと?」
「顔は悪いって言われました」
笑いながらまずこのことを話すのだった。
「太ってるし背も低いし」
「それですか」
「けれど笑顔がいいって言われたんですよ」
ここでその笑顔を周りと視聴者に見せるのだった。屈託がなく邪なところもない。確かに実にいい笑顔であった。その笑顔を見せたのである。
「それにですね。心がいい
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