第三章
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第三章
「その子供達皆にあげたいなって思っているんですけれど」
「あげたいって何を?」
「サインです」
彼は言った。
「僕の色紙。どうでしょうか」
「いいと思うよ」
やはり運転を続けながら答えてきた。
「それでね」
「そうですか。それじゃあ」
「けれど。いつもマメだよね」
マネージャーはここまで話を聞いたうえでまた彼に対して言うのだった。
「まっちゃんも」
「僕がマメですか?」
「そうだよ。いつも共演者やスタッフに気を使ってくれて優しいし」
まずはこのことを彼自身に話すのだった。
「しかも視聴者の人のサインにもいつも応えてるし」
「それはその」
「どうしてなんだい?」
マネージャーはさらに問うてきた。
「いつもそうやってるのは何でなんだい?」
「自然にです」
こう答えたのだった。
「それは自然になんです」
「まっちゃんの持って生まれた性格ってわけだね」
「はい、言うとそうです」
このことだと彼も認めるのだった。
「それは」
「そうか。性格か」
マネージャーは彼の今の言葉に頷く。実に納得した顔であった。そしてその顔でまた言うのだった。
「いいねえ」
「いいんですか」
「意識して何とかやすよりそうやって自然に出来る方がやっぱり凄いよ」
彼はこう言って顔を頬笑まさせていた。
「やっぱりね。そっちの方がね」
「そうですか」
「そうだよ。もう性格そのままでそういうことができるんなら」
言いながらその顔を綻ばさせていた。そしてまた言ってきた。
「そうだな。決めたよ」
「決めたって?」
「俺決めたよ。ずっとまっちゃんのマネージャーだ」
本当に意を決した言葉であった。
「ずっとな。まっちゃんのマネージャーだよ」
「僕のですか」
「絶対に凄いタレントにしてやるよ」
そしてこうも言うのだった。
「絶対にさ。してやるからな」
「はあ」
「実はまっちゃん最近凄い評判いいんだよ」
「そうなんですか?」
「実を言うと前からね。よく気が利くし真面目だって」
それで有名なのだった。まずは性格なのだった。
「それであちこちの番組からも声がかかってるんだよ」
「そうだったんですか」
「よし、仕事したいだろ」
「はい」
マネージャーの言葉に対してすぐに頷く。はっきりとした声で。
「それはもう。是非」
「倒れるなよ。どんどん仕事入れていくからな」
「御願いします」
「バラエティだけじゃないぞ」
それだけではないというのである。実は彼が今から撮影するその番組がバラエティ番組なのである。
「お笑いだってドラマだってな」
「何でもですか」
「何でもやって凄いタレントになるんだよ」
前を見ながら松村に言う。
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