第一物語・後半-日来独立編-
第六十七章 強くあるために《3》
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うと思い、胸の奥底に思いを閉じ込めた。
兄と妹の会話に一段落付いたのを見て、トオキダニは空から地へ落ちる麒麟を見ながら言う。
「来るぞ、竜神の竜口砲が」
ここからでも竜神の周囲には、雷に陽炎が揺らいでいるのが見て分かる。
トオキダニの竜口砲は素早く小刻みに身体を振動させ、発せられる熱と内部流魔を口から吐き出す形だ。竜神はそれとは違い、雷による熱を溜め込み、同じく口から吐き出すという形を取っている。
雷を起こし、熱を貯めるなど。さすがは神のなせる技だと感心する。
決まる。
何故かトオキダニは、いや、それ以外の者達も思った。
それは竜神が吠えた瞬間。
全ての音が無と化し、無音へと世界を変えた。
数秒後。
●
奏鳴は堪え切れない感情の動きを感じていた。
おかしくなりそうで、暴走に近い感覚だ
意識が飛びそうなのを必至に堪えながら、竜神が竜口砲|《ドラゴンブレス》を麒麟に向かって放ったのを見た。
少しの無音の間。次に来たのは爆音以上の音。
鼓膜が破れる前に、非常用の身体保護の加護が発動するが、鼓膜を打ち付ける音には変わりなかった。更には排熱による熱風が竜神の背後、及び左右両方、大幅に吹き荒れた。
災害と捉えたのか、領土守護系加護が西貿易区域にのみ発動し、その場にいる者全てを加護によって安全を確保した。
熱風に飛ばされる者もいれば、背を低くしたり、物を掴んだりして留まっている者もいる。
吹き飛ばされる前に奏鳴は政宗を甲板に刺し込み、支えとすることで堪えた。一方のセーランも流魔操作によって甲板に流魔を繋げて、荒れ狂う風に当たるも吹き飛ばされないようにしている。
竜口砲は一直線に麒麟へと向かい、麒麟が抗うその前に、光速と捉え間違える程のとてつもない速さで黒き麒麟の身体を穿った。
圧倒的だった。
竜神が放った竜口砲は巨大な麒麟の全身を飲み込み、塵にもならせず、存在もろともこの世から消し去った。
残るは竜神と弱まった熱風だ。
勝ったのだ。
奏鳴が、黄森の長である央信に。その事実は数秒後、誰もが理解した。
喜ぶ者もいれば、地に手を着く者もいる。
目の前の現実を見ている者にとって、当の奏鳴の異常を感じ取った者は誰一人としていなかったが。
「ぐ……うああ……あああああ!」
政宗を手放し、両の手で頭を抑える奏鳴。
頭が割れそうな痛みを覚え、発せられる声が痛みの程を表す。
まずい。セーランは感じ取った。
神の力を使い過ぎ、身体になんらかの変調を来したのだ。
あの天魔を一撃で消し去る程の竜口砲|《ドラゴンブレス》を竜神は放ったのだ。幾ら竜神の血がその身に流れ、神人族だろうと宿り主の奏鳴が平気なわけがない。
セーランは奏鳴の元に駆け寄り、崩れ落ちる奏鳴を受
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