第一物語・後半-日来独立編-
第六十七章 強くあるために《3》
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らせては叶わぬ夢となる。ゆえに辰ノ大花を護るため、負けられない!」
「ふざけるな! ここまで来て、何を今更!」
「行くんだ。共に、生涯を誓い合った者と共に。
もう失いたくない、大切な人達を。守られているだけでは駄目なんだ。今度は私が皆を救う番なのだ――!」
感情を吐き出し、奏鳴は腹の奥から叫んだ。
未熟だった自分を嘆き、過去を受け入れ、未来へと捧げる叫び声。
竜の咆哮。
辰ノ大花に響き渡る叫び声は霊憑山に反響し、確かなる竜神の咆哮が上乗せされた。
嘆きとも、覚悟の現れともとれる咆哮と共に、握る竜神刀・政宗を奏鳴は振るう。
麒麟を切る軌道で、虚空を断つ。
正宗を振るう度に竜神は青く光り始めた。現実空間内での竜神を構成する流魔が活性し、光を放っているのだ。
まさに力の証明だ。竜神のではなく、奏鳴自身の力。
誰もが初めて目にするその光は優しいもので、眩いが目を開けていられる。不思議な光だった。
何処か温もりを感じられる。
「進んでいくとそう決めた。振り返ろうとも立ち止まらない。もう二度と……私は、私を見失いたくないから」
苦しかった日々の記憶。そのなかでも友がいて、仲間がいて。皆はずっと自分を見てくれていた。
見ていなかったのは自分の方。
現実から目を背け、楽な方へと逃げていた。
それで何かを失った。
もう二度とそのようなことはしない。
だからこそ越えていく。過去の自分を、出来事を、これから来るであろう未来を。
「本当に皆、今まで見守ってくれて――」
頬を伝う滴。
悲しみから流れたものではない。嬉しさのあまり、目頭から頬をなぞり落ちていった。
苦しみしかなかった世界に、こんなにも幸せなことがあるなんて。なんで今まで気付かなかったのだろう。
奏鳴は思った。
愚かだった。悲劇を嘆いてばかりの自分が愚かで仕方無い。
その事実があるからこそ、
「ありがとうございました――――!!」
この現実で自分を支えた者達に、心の奥底から感謝出来る。
思いは力となり現実に現れる。
竜神が麒麟の、その巨体を空へと吹き飛ばした。高く、青空に黒い色が飛ぶ。
終わりの瞬間がそこにはあった。
青天に雷鳴が轟く。
雷が竜神を包み込み、激しく稲光を発している。
●
「竜神による竜口砲|《ドラゴンブレス》か。これは見ものだな」
空を見上げて、機竜系破族だからトオキダニは竜神を遠目に見た。
トオキダニ自身も行った竜口砲。それを今度は竜神が行おうとしていた。
基本は竜口砲の衝撃を和らげるために骨格を組み変えなければならないが、変える必要が無いということは異常としか言えない。
巨大な竜神の身体から放たれる竜口砲は予想を遥かに越える威力だらう。この世
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