第一章
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」
このことを彼に話すのだった。
「しかも我が社がはじまってからね」
「そうだったのですか」
「だから社長が是非にというんだよ」
何と会社のトップから直々であった。
「もうね。あの番組に出してくれって」
「社長がそこまで」
その番組はこのテレビ局の看板番組であった。この番組を毎日四つの十時からやりそれでかなりの視聴率を稼いでいたのである。その番組に研修が終わってすぐの人間を送り込むというのは確かに異例の抜擢であった。
「受けるかい?」
「御願いします」
断る筈もなかった。彼は二つ返事で引き受けることにしたのだった。
「それでは是非」
「うん、じゃあ頼むよ」
「はい」
こうして彼はいきなり異例の抜擢からはじまった。彼は忽ちその甘いマスクと歯切れのいい弁でお茶の間の人気者になった。それに対して松村は相変わらずの下積み生活だった。しかしそれが続いた三年目のことだった。
「あいつな」
「ああ、よくやってるよな」
事務所の間で少しずつだが彼の評価があがってきていたのである。
「真面目でどんな仕事でも引き受けてな」
「仕事もバイトもないと事務所の仕事手伝ってくれるしな」
「よくやってるよな」
次第にではあるが評価があがってきていたのである。
「それにな。コメディアンとしてもだ」
「どうなんだ?」
「毎日勉強してるぜ」
このことも次第にではあるが皆が知ってきていたのだった。
「おまけに親切でな」
「そういえば何か家に拾った犬や猫が一杯いるってな」
「子供の頃からそういう犬や猫拾って育ててるらしいな」
「いい奴なんだな」
その人間性も周囲はわかってきていた。
「気が利くしな」
「なあ、あいつ」
そしてこういう話の流れになっていった。
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