第九話
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ン両艦隊は先の戦闘で戦力を減じていたがどの艦隊にも所属していない予備の兵力を補充され単純な艦艇数は元に戻っていた。同盟軍においてはすぐに補充する艦隊などないのに対し、帝国軍は本国から離れた地においてでも艦隊の補給を可能としていた。無論いくらでも補充できるわけではなく、グリルパルツァー・クナップシュタイン両艦隊に補充された一個艦隊分は確実に減っている。
「撃て!」
本来帝国軍と同盟軍の戦闘艦に射程の差はないに等しいのでお互い同時に発射の合図が下されるのがほとんどだったが今回は同盟側からのみ先に下された。
回廊内を進み奥に同盟軍を補足した帝国軍は、回廊外縁部に小惑星群に半ば埋没するように潜んでいた同盟軍によって奇襲を受けた。狭い回廊内で過度に密集していた帝国艦隊に向け同盟軍の火力は集中して浴びせられ爆発を連続させていた。むろん帝国軍もある程度の被害を覚悟の上であったが途中から恒星風にもあてられやむ負えず回廊内から後退した。
帝国軍の初撃を躱した同盟軍は特に何もなかった。
「帝国軍が後退しました。次はどうします?」
第十三艦隊参謀長ムライ中将が場を進行させるために若い上司に問いかけた。
「敵の一個艦隊が危険宙域を突破するようです」
通信士が衛星から得た情報を淡々と告げている。
「敵の動きは予定通りだね。だから予定通りに行動する」
その若い司令こと同盟軍第十三艦隊・第十五艦隊を率いる宇宙艦隊総司令長官ヤン・ウェンリー元帥はいつもと変わらない様子で言い切った。
同盟軍はマル・アデッタを戦場に選ぶ際下準備を行った。まず同盟建国から得られた二世紀以上のデータを分析しマル・アデッタの恒星風や小惑星などの行動をある程度パターン化した。
フェザーンなどは通商に通ることのないこの星域の詳しいデータなど持ち合わせていない。つまり同盟内の地理情報をフェザーン航路局からの情報に依存している帝国軍は同盟ほどマル・アデッタの情報を持っていない。
次に小惑星帯の奥深くに簡易的な補給基地を建設した。最悪の場合帝国軍はここから比較的近い惑星ウルヴァシーから補給を受け続け長期戦に持ち込まれる可能性も否定できないからだ。
最後に無数の小惑星のいたるところに通信衛星、監視衛星を潜ませていた。これにより小惑星帯に踏み入れた帝国軍はその行動を陣形、編成に至るまで即座に同盟軍に知られることになる。さきほどの一個艦隊を補足したのもそれらの衛星郡のおかげである。
グリルパルツァー艦隊による「様子見」を済ませた帝国軍は次の作戦に打って出た。回廊内に依然としてとどまっている同盟軍を追い出すために、星系外縁部に配置されていたファーレンハイト上級大将率いる艦隊が動員されることになった。
ファーレンハイト艦隊は回廊を通らず危険宙域を突破し回廊の
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