SAO編
第一章 冒険者生活
3.後ろではなく
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能では無いのかもしれない。これはクエストなんだ。つまり、普通なら達成できること前提のモノのはずだ。
でも……《あれ》は理屈じゃない。
巻き込まれたら確実な《死》が訪れるという予知にも似た予感。
大昔の人と人が大勢で斬り合う戦の雰囲気というのはこういうものなのかなと、現実逃避しそうになるわたしがいる。
「……無理…だ。……あんなの、無理に決まってる……っ」
誰かが震える声で力無く叫ぶ。
前に茅場晶彦っていう人が言った言葉が、わたしの頭の中でこの状況にピタリとハマった。
『諸君にとって、《ソードアート・オンライン》は、すでにただのゲームではない。もう一つの現実と言うべき存在だ』
そう、この恐怖は現実のもの。
こんな無情な現実に、救いの無い仮想(リアル)に、わたしたちは絶望し、誰もが戦う気力を奪われた。
奪われたと思った。――なのに。
「……………なん、で……スか……?」
なんで……なんでなんスか?
どうしてっ、あんたはそんなにも堂々とっ、まるで日課の散歩にでも行くような自然さでっ、そこまで平然と前に出ているんスかっ!?
――キリュウさんっ!!!!
「………………」
キリュウさんは、目の前の光景に魅入られたかのように身動きの取れないわたしら防衛メンバーの数メートル前、石橋に差し掛かる所までトコトコといつもの無表情で歩いていった。
そして、ウィンドウを開いて何かを打ち込むような操作をした後、左手に持っていた槍を両手で持ち直し、切先をモンスターの群れに向け――
「っ!?」
ダンッッッ!! と、いきなり大きな音を立てながら石橋を叩き踏むように腰を落とした。
当然わたしら全員はその音に驚き、モンスターの群れではなくキリュウさんに視線を向ける。
わたしらの前で、ただ一人モンスターの群れに立ち向かうかのように構えるキリュウさん。
この位置じゃ顔を見ることは出来ないけど、その背中は何故か凄く大きく見え、なんでか自分の心を支配していた恐怖もスーっと薄らいでいく感じがする。たぶんそう感じているのはわたしだけじゃないはずだ。
それはきっと《安心感》によるものなんだと思う。
想像してみて欲しい。誰もが死の脅威にビビッて絶望している状況で、たった一人だけ平然とその脅威に立ち向かおうとしている人の姿を。
きっとそんな人がいるだけで、絶望の中に希望が見えてくる。
一緒に立ち向かおうという想いが沸いてくる。
――もうあんた、ほんとスゴイッスよ。キリュウさん……っ。
数瞬前のブルってた自分のことも忘れて、わたしはキリュウさんを見ながら口が緩むのを感じた。
「…………予想よりも、敵の数が
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