SAO編
第一章 冒険者生活
3.後ろではなく
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そういう事になった。
モンスター襲撃までの残り時間【0:12】
もう、何処に行くということも出来ない。
この場に居る誰もが、黙って門の外、石橋の向こうをじっと見ていた。
「…………来た……」
誰かが呟いた。
「……あ」
全員が目を凝らす。
「…………ひっ」
わたしの近くいる人が息を呑んだ。
「…………クソがっ」
リックさんが悪態を吐く。
「う、うわああああああ!!?」
ネルソンさんが叫んだ。
「キ、キリュウさん……っ」
ルネリーとレイアがキリュウさんの服を掴む。
「…………っ」
わたしは――いや全員が、《それ》から目が離せなかった。
《それ》は最初、門から続く街道の先に揺らめく陽炎だった。
陽炎は段々と横に広がり、次第に輪郭を確かにしていった。
透明な揺らめきに色が付き始め、まるで何処か異界から次々と実体化しているような、そんな光景。
ド……ドドド……ドドドドド……と《それ》がこちらに近づくにつれて大きくなる重低音の地鳴り。
ギーギー、ギャッギャッと其処彼処から聞こえて来る、何故か言いようも無い不安に駆られる耳障りな奇声。
その地鳴りのような音と、奇声に感じる不安が合わさって、実際に足元が揺れているような錯覚を起こす。
きっと俗に言う《足が震える》という状態になっていたんだと思う。経験したのは初めてだ。
そして、ようやく《それ》がしっかりと視認出来る位置まで来た。
「…………魔物の……群れ……」
――そう。まさに《魔物の群れ》。それ以外に言いようがない。漫画で見た百鬼夜行の妖怪たちのような数十匹からなる異形の大群。
確かにそのほとんどは、これまでわたしらが倒してきた種類のモンスターたちのようだ。
……だけど、これだけの大群を見ると、それらは何故か《別の何か》に見えてくる。
別の何か。未知の何か。知らない何か。
知らない解らないは、人間に《恐怖》という感情を呼び起こす。
その恐怖は、はじまりの街の外で初めて戦ったイノシシの比なんかじゃなかった。
さっきまで「なんとかなる」と思っていたわたしの頭に、「あれは無理だ」という思いが生まれる。
――やだやだやだっ、逃げたい……っ。此処に居たくないッスよぉ……っ!!
モンスターの群れのシルエットが段々に大きく鮮明となっていくのと同時に、わたしの両目もじわじわと熱くなっていくのを感じた。
たぶん、《あれ》を見ている誰もがわたしと同じことを考えていると思う。
――あんなの勝てるわけがない。
理屈では、勝つのは不可
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