第三章
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ファーストミットに収まった。ほぼ同時に有田は一塁ベースを踏んだ。判定は。
「アウト!」
審判は大きく叫んだ。それを見た近鉄ファンは叫んだ。
「何で有田はこうも足が遅いんや!」
確かに有田の足はお世辞にも速いとは言えなかった。だが今回は別であった。大橋の守備が、肩があまりにも凄過ぎたのであった。
大橋譲。かっては東映の遊撃手であった。その守備は東映時代より定評があった。しかし打撃はからっきしであった。
その大橋に注目したのが西本であった。あの四六年のシリーズ、九回の悪夢の伏線としてエラーがあった。
当時阪急の遊撃手は阪本敏三であった。小柄ながらその俊足が売りでパワーもあった。しかし守備はこの時既に頭打ちとなっていた。
あの敗因は守備である、そう確信した西本は思い切ったトレードを敢行したのである。
「えっ、本当か!?」
この話を聞いた記者達は皆目をむいた。何と阪本と大橋の交換トレードなのである。
同じリーグ内でしかも同じ守備位置の選手の交換トレード。これは皆の予想を大きく裏切っていた。
阪本は阪急の主力打者である。それに対し大橋の打撃は比べ物にならない。幾ら何でも阪急にとってあまりに不利なトレードであった。
「よろしいのですか、監督」
西本と親しい者は彼を何とか思い止まらせようとする。だが彼は首を横には振らなかった。
「まああの男がどう活躍するか見といてくれや」
西本はそれだけ言った。そしてトレードを敢行した。
このトレードは成功に終わった。大橋はその守備を生かし阪急の失点を防いでいった。山田や足立等当時の阪急の投手には打たせて取るのを得意とする者が多かった。そんな時に大橋の守備は頼りになったのである。
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