第二章
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き速球は西本をしてこう言わしめた。
「あんな速い球は見たことがないわ」
西本はこれまで多くの速球投手を見てきた。杉浦忠しかり江夏豊しかり村山実しかり堀内修しかり。ペナントでシリーズでオールスターで多くの速球投手を見てきた。その彼をしてそう言わしめた山口の速球は見る者の目を驚かせた。五一年のシリーズでは彼の肩慣らしを見た後楽園の観客達が一瞬沈黙した程である。
彼だけではなかった。後に盗塁の世界記録を達成する福本豊、西本の打撃の真髄を骨身にまで叩き込まれた左の主砲加藤秀司、右の主砲として活躍した長池徳士、そしてあのシリーズで王に打たれた山田久志。皆西本が鍛え上げた戦士達であった。
しかもその他にもいた。ベネズエラからやって来た陽気な助っ人マルカーノ。恐るべき守備を誇るウイリアムス、先のシリーズで勝負を決定した走塁を見せた蓑田浩二。西本の頃よりも戦力は上がっていた。
そして彼等を率いるのは温厚な知将上田利治。関西大学時代は球史に名を残す伝説的投手村山実とバッテリーを組みその頭脳を買われて広島に幹部候補生として入った男である。彼は選手としてはすぐに終わったがコーチとして活躍した。西本が自らの後継者に選んだ男である。長嶋巨人を破り日本一を達成した彼は今や名将の名を欲しいままにしていた。その彼が精鋭阪急を率いているのである。
「見事なもんやな」
西本はベンチに入って来た阪急の選手達を見て言った。
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