SAO編
第一章 冒険者生活
2.怒涛
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「レイア! チマ!」
ルネリーの声で二人が、現在戦っている《プレデット・バルブ》の背後へ、左右から回りこむ。
そして、レイアが剣技《ホリゾンタル》で頭頂部の花を切り落とし、同時にチマが彼女の最も得意とする縦軌道の斬撃技《バーチカル》で敵の背中を斬り払った。
「…………」
三人が特に苦戦をしていないことを横目で見ながら、俺は目の前のトカゲに体重を乗せた下段突きを放つ。
俺が相手にしているのは、角ネズミと紫大トカゲだ。……はっきり言って、弱い。
基本的に頭は良くないのか、軽く速めのフェイントをかければ、狙い通りの動きをしてくれる。
HPの少ないネズミを最初に倒せば後は簡単だ。リーチのある槍での攻撃には、リーチの無いトカゲでは歯が立たない。一定の距離を保ちつつ弱点である頭に幾度も切っ先を突き立てれば、ソードスキルを使わずとも倒すことが出来た。
「ふぅ……終わったか」
襲いかかって来た四匹のモンスターを倒し終え、再度《索敵》をかけながら周囲を見渡す。
敵の反応が無いことを確認してから、ようやく槍を構えたままの残心を解いた。
「ハァァァ〜……。もうこれで二十七回目の襲撃ッスよ? さすがにそろそろしんどくなってきたッスよぉ〜」
チマの言う通り、俺たちは一息吐く暇も無いくらいのペースで、此処に来るまでに既に二十七回もの襲撃を受けていた。更に一回一回が二匹以上の混在モンスターのPTでもあった。一匹一匹の対応が違うものを同時に対処するというのは、確かに精神をかなり擦り減らす。
「……そうだね。武器の耐久値も半分を切ってるし、そろそろ村に着きたいね」
「ねぇねぇ、あとどのくらいで着くの?」
精神的疲労ゆえの溜め息を吐いているレイアの横で、特に疲れた様子を見せないルネリーが中腰になってNPCの少女に訊いた。
「うーんとね、あと五分も歩けば着くと思うよ?」
「そっか、じゃあ後少しだねっ」
笑顔で答える少女に、同じく笑顔で頷くルネリー。
「…………」
――しかし、改めて考えてみるとかなり不可思議だな……。
こんな年端もいかない少女が、化け物の犇めく森の中に居たということもだが、案内をしてくれている最中の挙動も可笑しい。
こちらとしては出来るだけ武器を振り回せる広い空間を移動して貰いたいのだが、この少女は近道だからと木々の茂る狭い場所ばかりを通る。モンスターが現れればその場に頭を抱えてしゃがんで震えているのに、居なくなればさっきまで怯えていたのが嘘のように笑顔で歩き出す。更に、こんな道しるべも無いような場所で迷いも無く村に向かえることも可笑しければ、先ほどのルネリーの質問に答えたように、正確にあと何分と答えられるというのも可笑しい
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