七十 裏切り
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。次第に大きくなってゆく。
眼前で殊更強く轟いたカツンとした音が少年に顔を上げるよう促した。
「上手く接触出来たか?」
薄闇からの問い掛けに、少年は満面の笑みで応えた。その笑顔はどこか嘘臭い。
「はい、ダンゾウ様」
「その割にはあまり信用されていないようだな」
暗がりから一抹の光の下へ姿を現した老人は、終始笑顔を浮かべる少年に眉を顰めた。主の言葉に、少年は笑顔のまま首を傾げる。
「なぜか警戒を解いてくれないんですよね…」
「…………」
困った風情で微笑む少年――サイに、ダンゾウは薄く眼を細めた。「解っているのだろうな」と杖で橋を打ちつける。
「最近不審な動きをしているうちはサスケに近づき、」
「友として振舞うんですよね。承知しております」
ダンゾウの言葉を引き継いで、にこりとサイが頷く。明らかに作った笑みを目にしてダンゾウは深く溜息をついた。
「信任投票が控えている今、秘密裡に行動しろとは言ったが…そう悠長にはしておられんぞ」
「…はい」
大名からは承認を得たが、上忍達の信任投票はまだ終えていない。この大事な時期に表立って動けぬダンゾウは自身の部下――それも子どもを使う事にした。
子ども同士なら気も緩むだろうという考え故、サイを宛がったのだが、思ったより現状は芳しくないようだ。
「どうやら綱手姫を火影に仕立てようとしているようだが…そうはさせぬ」
ふん、と鼻を鳴らしたダンゾウは「逆に利用してやるわ」と口許を歪めた。
「信任投票最終日は十日後だ。それまではせいぜい泳がせておけ」
くるりと身を反転させる。踵を返したダンゾウの後ろ姿にサイは頭を垂れた。
老いているものの、真っ直ぐに伸びた背中が長く延びた橋から徐々に遠ざかってゆく。
「サスケに取り入り、署名状を奪うのがお前の目的だ…―――それをゆめゆめ忘れるな」
「心得ております」
綱手の火影就任に対する署名を自らのモノにする。署名状まで手に入れれば、ダンゾウが火影に就く事は決定事項だ。
綱手を支持する名族達の署名状を奪い、あたかも自身が賛同されたかのように振舞えば、ダンゾウと対立する穏健派もおとなしくなるだろう。
だからこそ今すぐではなく、信任投票最終日のギリギリまで粘り、多くの署名が連なった瞬間をサイに奪わせる事がダンゾウの狙いなのだ。
「この件が上手くゆきましたら…」
不意に背後から掛けられた部下の一声に、ダンゾウの足が止まった。
「解っておる。久しぶりに会わせてやろう」
肩越しに振り返る。
「シンに」
今一度感謝の念を込めてサイは頭を下げた。ダンゾウの姿が再び暗がりの中へ消えてゆくのを見送ってから、ようやっと顔を上げる。
「…まずはサスケくんと友達にならなくちゃ」
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