無題
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帰ってこんか。もう親父帰ってこんか」
月が赤い。そしてひどく大きい。地球の影にわずかに侵されてそれは宙に浮いている。そのディティールは月を明らかに闇の前面に押し出していた。流れ星の流れない夜空が関東の平野を覆った。アスファルトは伍一の家まで続いている。「新山」まで続いている。
ヒトノ想像ヲコエタモノゴトトハ
ナシトゲタ人ノ一秒サキヘノタビノ結晶ナノダ
ソウ ソレガ我欲ノタマモノダトシテモ
アカイ血ノモノガタリダトシテモ
一秒サキヘノタビノ結晶ナノダ
ヒトツノ結晶ハソレヲツムギダス旅ヲシラズシテカタラレ
ソノタビハソノ人ノナカニダイジニシマイコマレル
スベテノヒトノタビハスベテノヒトノココロニ
ある六月の土曜日。「新山」のすその藪で中学生が腰を振った。年上の女の子と腰を振った。桜の木の下で。その一本、時期はずれの花が咲く。淡いピンク色の花。通りすがりの人はそれに感じ入り、「シンザン」を拝む。神の山だと言って拝む。人々にとって未だそこは神の住む所なのだ。
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