第十章
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た。他の選手達も言うまでもなかった。悪太郎と呼ばれ全盛期は速球派で鳴らした堀内でさえ真っ青となった。
観客達も沈黙した。そしてやがてザワザワ、という人の声が聞こえてきた。
「何だ今のは・・・・・・」
かって江夏や村山といった恐ろしいまでの剛速球を武器に巨人に立ち向かってきた投手達を見てきた年老いた巨人ファンが思わず呟いた。彼の自慢の一つはあの沢村栄治をその目で見たことだ。
「あんな球投げる奴を今まで見たことがない」
彼も呆然としていた。山口の球はそれ程までに速かったのだ。
打てない。最早それは消える魔球であった。ボールがミットに収まった後でバットを振る。それ程までに凄かったのだ。七八年のシリーズの時には彼は怪我の為にいなかった。だが彼がいたならばヤクルトの日本一はなかっただろうと言われている。
「今まで見たなかで一番速い」
多くの者が口を揃えてそう言った。その中には西本もいた。長い野球生活で多くの投手を見てきた彼ですらそう言ったのだ。
近鉄が彼に苦しめられたのは五〇年だけではなかった。今まで山口を打つことが出来なかったのだ。
「あいつの高めの速球には絶対に手を出すな」
西本は選手達に対して言った。どんな投手に対しても逃げることを嫌う彼をしてそう言わしめたのだ。それ程までに彼の剛速球は打てなかった。
その彼がマウンドに来たのである。阪急が最強の切り札を出してきたのだ。
「梶本め、勝負にきおったわ」
西本は山口と梶本を見て言った。
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