紅の雨 その三 そして、…雨は静かに降り出した
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に着物の裾を捲り上げ、妖艶なスラリと伸びた足を彼女の前に曝け出す。
それには以前目にした根≠ヘどこにも見当たらない。
「そんなに心配してくれたのか?」
その声にはっとして思わず体を固くする。
いくら心配だったからとは言え、相手は女性だ。
他人にこんな無防備な所を見られて良い気分なわけはない。
「すっすみませんっ!わっ!」
慌しくその場から立ち去ろうとするが、逆に手を握られ、また豊満な胸に引き戻されてしまう。
「あっ、あの?」
妙にドキドキしてしまい、余計に頬が熱くなるのを感じる。
それは母とも誰とも似つかない温もりに抱きしめられている所為だけだろうか。
「再び、しえみの前に現れたのは他でもない。そなたの後夜を貰い受けに来た」
「どこに行くんですか?」
「ふふっ……直に解る」
先と同じ質問と返答が繰り返されて何十分経ったのだろうか。
両目共、あの艶やかな掌に覆われ、後頭部には何とも柔らかい双丘の感触が少女を不安から遠ざけていた。
別段、山や坂を下っている訳ではない。
ただ平坦な所をわざわざ選んで歩かせてくれているようで……申し訳ない気持ちでいっぱいなのだ。
「ひゃっ!?」
足元からは大地を摺る音と恐怖とはまた違った鼓動の速さだけが耳に煩く響く刹那、背後から促していた彼女が急に歩みを止める。
危うくその場に転んでしまいそうになったが、両目を覆う掌が強く胸に押し当ててくれたことにより難を逃れられ、あまりのことにしえみは思わず息を吐いた。
「すまない……だが、もう目を開けていいぞ」
「……うわああああっ!!」
そう言われ、恐る恐る開けた瞼の外には俄かには受け入れがたい光景が広がっており、お世辞にも良いとは言えない面で辺りを見渡す。
少女の碧眼の中に飛び込んできたもの………………それは。
「きれい…」
その一言では言い表しつくせぬほどの色とりどりの植物が広い庭園の中で咲き誇っていた。
その場に屈まなければ見逃す苔や何万年もの間、この地球を見守ってきたであろう巨木が一同に介するかのように自生するこの場所は、まさか…。
「天空の庭にようこそ……しえみ」
「えっ!?」
今、彼女は一体何を言ったのだろうか?
天空の庭……それはこの少女が祖母から聞いていた憧れの場所である。
「貴女は一体…」
何者なのかと問おうとしていきなり強い風が一陣吹いてきて思わず目を強く閉じる。
冬は疾うに過ぎたとは言え、やはり夜風は些か肌寒い。
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