第三章
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第三章
その佐々木が打った。木田のストレートをセンター前に弾き返した。
「よし!」
既に吹石はスタートを切っていた。そしてホームを踏んだ。これで同点である。
試合は振り出しに戻った。だがいつもの木田なら問題はなかった。この後は完璧に抑えるからである。
だが今日は違っていた。
「監督、まずいですよ」
木田の球を受けるキャッチャー加藤俊夫が大沢に言った。
「どうしたんだ?」
「木田のストレートにノビがないです」それにカーブも」
木田の武器はパームとスクリュー、特にキレのいいカーブであった。それが通用しないとなると。結果は目に見えていた。
「そうか、だからさっき佐々木に打たれたのか」
「どうします?」
「どうします?決まってんじゃねえか」
大沢は加藤に対して言った。
「うちはここまで木田でやってきたんだ。今日も木田でいくぜ」
彼はここで持ち前の男気を見せた。彼はその男気でチームを引っ張ってきた。ここでもそれを見せた。
だがそれで抑えられる相手ではなかった。相手は打率、ホームラン数共にこのシーズンで新記録を打ち立てたいてまえ打線である。如何に木田とはいえ不調の状況では防ぐことのできる相手ではなかった。
いてまえ打線の怖ろしさ、それは下位打線であろうとも打つことであった。例え控えでも二桁のホームランを放つ者までいた。そして連打もあった。
四回表木田は捕まった。まずは有田修三がセンター前に弾き返した。続けてアーノルドも。次の栗橋茂は四球だった。満塁である。そしてここで先程ツーベースを放った吹石である。
「気にするな、ゲッツーを狙え!」
大沢が檄を飛ばした。彼は木田に全てをかけた。
だがこの日吹石は好調だった。そのバットが一閃した。
「しまった!」
木田は思わず叫んだ。打球は流星の様な速さで右へ飛んだ。
入りはしなかった。だが明らかに長打コースであった。
まずは有田がホームを踏む。アーノルドも。そして栗橋が三塁ベースを回った。
「クッ、止めろ!」
大沢が叫んだ。だが遅かった。栗橋は長打で知られた男だが足もあったのだ。
三点が入った。打った吹石は三塁ベース上でガッツポーズをしていた。
「やられたか・・・・・・」
日本ハムナインは彼を見て歯噛みした。それに対して近鉄ナインはもうお祭り騒ぎだった。
「ようやった、吹石!」
大阪から後楽園に乗り込んできた近鉄ファン達が三塁側から歓声を送る。
吹石はそれを聞きながら笑っていた。三塁ベンチにいる近鉄ナインもだ。
「よう打った」
西本は彼を見ながら心の中で呟いた。
「けれどまだまだ試合は中盤や。ここで気を緩めたら終いや」
そしてベンチに座る鈴木を見た。
「あとはスズが何処までやるかもあるな」
そして顔をグ
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