暁 〜小説投稿サイト〜
SAO 〜冷厳なる槍使い〜
SAO編
第一章  冒険者生活
1.林檎と少女
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ちには気付かずに木を見て唸っている。
 そんな女の子に、あたしは声をかけた。

「ねぇ、どうかしたの?」

 女の子は、やっと気付いたかのように一瞬びっくりした顔をしてから、話しかけてきた。

「……えと、風邪を引いてる弟に林檎を食べさせてあげようと思ったんだけど、わたしじゃあそこの実まで届かないの……」

 その言葉を言った瞬間、女の子の頭の上にハテナマークが出てきた。
 ――あ〜、やっぱりクエだったのかぁ。
 あたしは視線だけで後ろのキリュウさんたちに、クエストを受けるかどうか問いかけた。
 そして全員の頷きを肯定と見なして、あたしは女の子に言う。

「じゃあ、あたしが取ってあげるよっ」

 そう言って木を見上げるあたし。視界の左端には【クエスト:林檎と少女】というクエストタグの更新が記されていた。
 あたしが了解の意を告げると、少女の頭のハテナが、クエスト受領中を表すビックリマークに変わった。

「おー、けっこう高い所にあるなぁ」

 少女が見上げていた木は、やはり《林檎の木》だった。
 だけど、《林檎の実》はかなり高い場所にあるみたいだ。地上4、5メートルくらいかな。確かにこの女の子じゃ届かないなぁと思いながら、あたしは木に登ろうと最初の太い枝に手をかけようとした。


「……待て。俺が行く」


 と、登ろうとしたらキリュウさんが止めてきた。

「えへへ。大丈夫ですよ、あれくらいだったらっ」

 きっと心配してくれたんだろうなぁ、と思うとちょっと嬉しくなった。
 あたしは気分良く、再度木登りを開始した。……したんだけど。

「……ネリー! あなた今スカートでしょっ」
「ちょっとは慎みを持つッスよ〜。ネリー」
「にゃっ!?」

 丁度足を上げようとしたところで二人の指摘が入って、思わずスカートを抑えてしまった。
 まだ1メートルも登ってなかったけど、その拍子に滑り落ちてしまう。
 チラっと後ろを見ると、キリュウさんは……顔を背けてた。

 ――うぅ……恥ずかしいよぉ……。

 あたしはスカートを抑えたまま、そそくさと後退した。

「……す、すみませぇん。お願いしますぅ」
「…………」

 そう言ったあたしの言葉に、キリュウさんは無言で林檎の木に近寄った。
 そして勢いを付けて跳躍。ほとんど手を使わずに足だけで枝を踏みしめて登っていく。

「ほえ〜」
「凄い……」

 その様子を見て、チマとレイアが感嘆の声を上げる。

 ――うん。やっぱりキリュウさんはスゴイ。……そしてあたし、カッコ悪い。

 あたしはキリュウさんを見ながら、心の中でよよよ、と泣いていた。
 キリュウさんは、特に危なげも無く林檎を手に入れて軽々と降りて来た。


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