第百五十四話 北ノ庄その十二
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「そこから三好三人衆と争いその中で」
「遂には公方様をですな」
「義輝様を」
「御所を襲い弑逆した」
「恐るべき奴ですな」
「そうしたものを見ますと」
到底だとだ、明智も言うのだ。
「あの御仁は到底」
「ですな、油断なりませぬ」
「少しでも隙を見せれば」
「妙な素振りを見せただけでも」
「その時に」
「それがしもそうします」
明智もだ、松永が何かあればすぐに斬るというのだ。
「間違いなく」
「それが織田家の為ですからな」
「是非そうするべきですな」
「では我等も及ばずながら」
「そうしましょうぞ」
「今は大人しいがのう」
柴田もここでこう言う。
「あれば化けの皮じゃな」
「それがしもそう思います」
明智は柴田にも応える。
「あの御仁は一瞬でも油断出来ぬ方です」
「全くじゃ、しかし猿は」
柴田は再び羽柴を見て苦い顔になった。
「相変わらずじゃのう」
「いえいえ、それがしもです」
「わかっておるとでもいうのか」
「はい」
その通りだというのだ。
「ですから」
「どうじゃか、御主は機転が利いて人を見る目もあるが」
「その目で見ているからこそです」
「何処がじゃ、あればあ奴とは仲良くせぬ」
松永、彼とだというのだ。
「何度言えばわかるのじゃ」
「どう見ても悪い御仁には思えませぬ故」
「やれやれずじゃま。まあよいわ」
「宜しいですか」
「あ奴はそのうち何かを出す」
尻尾なり何なりをというのだ。
「尻尾をな」
「毒のあるですか」
「うむ」
蠍らしくだ、それをだというのだ。
「だからこそじゃ」
「権六殿の仰る通りかと」
明智は目を閉じ柴田のその言葉に応えた。
「やはり信用出来ぬ者はおります」
「そうじゃな」
「それがしもあそこまでの御仁は他に知りませぬ」
「幾ら戦国の世といえどもな」
「あそこまで悪辣な御仁は」
到底、というのだ。
「おられませぬ」
「そうじゃな、殿ももの好きな」
「何故殿はあの御仁を信任されておられるのか」
明智はここで首を捻った。
「そこがどうも」
「あれが殿のよいところじゃ」
「殿のですか」
「大器の方なのじゃ」
信長のそうしたところを言う柴田だった。
「だからじゃ」
「それで、ですか」
「うむ、だからじゃ」
それ故にというのだ。
「例えああした者でもな」
「一度用いられればですな」
「資質があれば重く用いられる」
柴田は明智や羽柴を見つつ言う。
「出自にもこだわりなくな」
「そして一度用いられればですな」
「用いられる時に見極められるのじゃ」
その者を、というのだ。
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