第百五十四話 北ノ庄その十一
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「そこまで悪しき御仁ではありませぬぞ」
「何処がじゃ、とにかくじゃ」
「弾正殿とはですか」
「付き合うでない」
決してというのだ。
「そう言っておくぞ」
「左様ですか」
「そうじゃ、蠍じゃからな」
「茶にしてもじゃ」
その茶の話もだ、柴田はするのだった。
「わしも茶をするからな、よかったら教えるぞ」
「ですな、権六殿は茶もお好きですな」
「近頃励んでおられますな」
前田と佐々もここで言う。
「だからですな」
「猿にも」
「教えられることなら何でも教える」
これが柴田だ、面倒見のよさもまた知られている。
だからだ、今もこう言うのだ。
「わしでよければな」
「権六殿がですか」
「教える」
まさにだ、そうするというのだ。
「遠慮はいらんぞ」
「そうですか」
「うむ、どうじゃ」
柴田は胸を張って羽柴に言う。
「茶のこともな」
「そうですな、それでは一度」
「茶もよいものじゃ」
柴田は只の武辺者ではない、そうした一面がここに出ていた。
「皆で共に飲むのがよい」
「ですな、それでは」
「うむ、ではな」
こうした話をするのだった、柴田も他の者達もとかく羽柴が松永と仲良くすることを好まなかった。それでだった。
柴田は再びだ、こう言うのだった。
「あ奴、本当に少しでもおかしなことをすれば」
「首を刎ねてやりましょうぞ」
「何か見せれば」
前田と佐々がすぐに応える。そして丁度そこにいた明智にも声をかける。
「十兵衛殿もそうですな」
「あ奴は油断出来ませぬな」
「まさに蠍だと思われますな」
「あ奴だけは」
「はい、それがしも」
明智もだ、前田達に真剣な顔で答える。
「あの御仁については」
「ですな、明智殿から見られても」
「あの者は」
「蠍は蠍であります」
明智も本心からこう言う。
「主家である三好家、そして公方様を滅ぼしております」
「奈良の大仏も焼いた」
「まさに悪の権化よ」
「三好家の方々からも聞きましたが」
今では三好家も織田家に組み入れられている、それで明智も彼等と話をしたのである。
「あの御仁は三好長慶殿の弟君達を次々と暗殺され」
「そしてですな」
「遂には三好家を」
「乗っ取っています」
主家乗っ取り、戦国の世にあっても悪行であることは言うまでもない。
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