第百五十四話 北ノ庄その十
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「茶道をされますか」
「それがしも立場が出来まして」
今や十万石単位の石高を貰っている、相当なものであることは言うまでもない。
「茶道もせねば」
「ならなくなったと」
「ですから」
それでだというのだ。
「それがしも」
「既に他の方に教えて頂いているのでは」
松永は羽柴の顔を見ながら彼に問う。
「例えば平手殿」
「平手殿ですか」
「はい、あの方はかなりのお茶好きですが」
「それはそうですが」
ここでだ、羽柴は困った苦笑いになって松永に答えた。
「あの御仁は怖いので」
「茶のことについてもですか」
「いや、口煩い方ですから」
平手は茶の場においてもそうだというのだ。
「大層厳しく」
「だからですか」
「はい、あの方から茶道は」
「では利休殿は」
「あの御仁は仰ることが難しく」
利休独特の感性からの言葉だ、茶の道に疎い彼にとって利休の言葉は非常に難しいものであるのだ。わからないまでに。
「ですから」
「それでなのですか」
「他には荒木殿もです」
彼にもだというのだ。
「お教え頂こうと思っています」
「あの御仁も茶がお好きですからな」
「はい、ですから」
「そしてそれがしにもですか」
「左様です、ではお願いしますぞ」
「わかっております。茶は非常によいものです」
松永も茶は好きだ、それでこう言うのだ。
「共に楽しみましょうぞ」
「それでは」
こう話してだった、そのうえで。
彼等は共に茶の話をしていた、だがその茶の話の後で。
柴田は羽柴のところに来た、前田達もだ。そのうえでこう羽柴に言うのだった。
「猿、いつも思うが」
「御主のもの好きも大概だのう」
「あの様な奴と話をするとは」
「全く以て」
「いや、そう仰いますが」
それでもだというのだ。
「あの御仁は面白い方ですぞ」
「馬鹿言え、あ奴の何処が面白い」
顔を顰めさせてだ、柴田は羽柴に言うのだった。
「何時首をかかれるかわからんぞ」
「そうでしょうか」
「そうじゃ、よいか?」
「あ奴とは話をせぬことじゃ」
前田と佐々も言う。
「門徒達とつながっておるやも知れぬ」
「裏切りを常としておる奴じゃぞ」
「全くじゃ」
中川も言う。
「少しでも隙があればじゃ」
「切り捨てるつもりじゃ」
柴田も本気でそう狙っているのだ。
「御主の人好きも時としては困ったものじゃ」
「しかしそれがしはどうしても」
「あ奴を悪者と思えぬか」
「はい、どうしても」
こう言うのだった、羽柴は。
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