第百五十四話 北ノ庄その八
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「北ノ庄に集結じゃ」
「そして、ですな」
「その地を見てですか」
「それでじゃ」
あらためてだというのだ。
「城を築くかどうかを決める」
「やはり一乗谷では」
ここで言うのは山内だった、彼も一乗谷についてはこう言うのだった。
「狭いですな」
「うむ、北陸全域を考えるとな」
「そして上杉謙信を抑えるにも」
それにもというのだ。
「狭うございますな」
「一乗谷はそこまで考えられた城ではない」
「越前だけの城ですな」
「越前一国を治め守るにはよいが」
しかしだというのだ。
「北陸には足りぬ、上杉への備えにもな」
「特に上杉ですが」
黒田が剣呑な顔で話す。
「その手強さたるや」
「まさに軍神じゃ、わしもじゃ」
「殿でもですか」
「正面から同じ数では勝てぬ」
信長もそう見ていた、謙信はそこまでの者だと。
「越後の龍と同じ数で正面から戦えるのは甲斐の虎だけよ」
「武田殿だけですな」
「他の者では適わぬ」
無論信長でもだというのだ。
「その甲斐の虎でも危うく多くの将兵を失うところじゃった」
「そうならなかったことについては」
竹中がその訳を話す。
「真田殿がおられたからです」
「真田幸村じゃな」
「あの御仁、その智勇仁どれも」
「傑出しておるな」
「天下随一です」
それが幸村だというのだ。
「まさに天下一の侍です」
「あの者がおるから武田は多くの将兵を失わずに済んだ」
「若しあの御仁がおられねば」
どうしてもだというのだ。
「武田の受けた傷は相当でした」
「左様じゃな」
「上杉謙信殿は軍神です」
竹中もだ、憧憬に近いものを見せて語る。
「それだけにです」
「正面からぶつかるべきではないな」
「同じ数では、いえ多少多くとも」
「戦えぬわ」
「当家で武といえば権六殿と牛助殿ですが」
柴田と佐久間、彼等こそが織田家の武の二枚看板だ。信長も彼等については全幅の信頼を置いているのだ。
だか、だ。それでもなのだ。
「あのお二人でも」
「勝てぬわ」
柴田や佐久間でもだというのだ。
「権六や牛助でも倍がなければな」
「上杉殿にはですか」
「勝てぬわ」
到底だというのだ。
「全くな」
「では」
「うむ、倍じゃ」
それだけ必要だというのだ。
「倍の数は必要じゃ」
「それが外での戦ですな」
「城に篭った方がいい」
上杉謙信、彼を相手にするにはというのだ。
「それなりの兵を置いてな」
「そのうえで、ですな」
「あの者には勝てぬ」
とてもだというのだ。
「城に入ってもそれなりの大きさの城でそれなりの数の兵がおらねばな」
「だからですか」
「武田には岐阜城がある」
今の織田家の拠点でもある、安土に新たな拠点を築いて
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