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三年目の花
8部分:第八章
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う言って彼はグラウンドに背を向けた。
「いや、ちゃうな」
 彼は言い換えることにした。
「決めるんや。ヤクルトがな」
 そう言ってその場を後にした。その背には気さえ漂っていた。
 二度目の決戦の時が来た。十月六日からの二連戦であった。場所は神宮。
「勝て!」
「やったれ!」
 もうファンの声が木霊していた。神宮は先の三連戦の時と同じく激しい熱気に包まれていた。
 阪神は百二十七試合を消化して六十六勝五十九負二分。ヤクルトは百二十六試合を消化して六十五勝六十負一分。ゲーム差は一であった。
 引き分けの関係で試合は共にあと五試合、そのうち直接対決が何と四試合もあった。
「面白いな」
 野村はそれを聞いてニヤリ、と笑った。
「昔南海にいた頃のプレーオフみたいや。こういった試合では何が起こるかわからへん」
 彼はかっての阪急とのプレーオフを思い出していた。
 それは昭和四十八年のことであった。この年からパリーグにプレーオフが導入された。ペナントを前期と後期の二シーズンに分け、互いの勝者を争わせて優勝を決めるというものである。

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