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三年目の花
8部分:第八章
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聞いて顔を少し赤らめさせた。
「柄じゃないよ」
 野村の嫌味なキャラクターを意識しての言葉だった。だがナインは野村の本当の姿を知っていた。だからそれはうわべだけのことであった。
 本来は繊細で心優しい。寂しがり屋で困っている者を放ってはおけないのだ。
「野村さんはいい人やで」
 ジャジャ馬で有名な江本孟起さえこう言った。彼は野村に認められ成長した男であった。
「わしみたいな我が儘な人間を喜んで使ってくれたんや。バッテリー組んだら十五勝やってな」
 その時江本は東映の敗戦投手に過ぎなかった。その彼を野村は喜んで使ったのだ。
 そして江本は一皮剥けた。それまでの敗戦処理投手からエース格のピッチャーになったのだ。
 その長身から繰り出す多彩な変化球と負けん気の強さが武器だった。野村は彼の才能を上手く引き出すことに成功したのであった。
 江本だけではなかった。多くの選手が彼の下で脱皮し、復活していた。野村再生工場の名前は伊達ではなかったのである。
 そんな野村だからこそ多くの者が慕っていた。彼程マスコミに伝えられる姿と実像が違う男も珍しかった。
 しかし阪神も粘る。八回には同点に追いつく。
「負けてたまるか!」
「勝つ!そして優勝だ!」
 選手もファンも一丸となっていた。彼等もまた燃えていた。
 しかし勝利の女神はヤクルトに微笑んでいた。
 九回裏それまで奮闘を続けていた伊東が打席でも見せた。
 ヒットで出塁したのだ。そして打席には飯田が入る。
 俊足巧打で知られている。それにパンチ力も結構あった。
「どうでるかやな」
 野村は打席に入る飯田を見た。彼は古田、池山と並ぶチームの柱である。
「あいつで今日は決まるな」
 歴戦の勘がそう教えていた。その決まる時が来た。
 打った。打球は右中間を飛ぶ。
「どうなる!?」
 新庄と亀山が追う。二人共足は速い。守備もいい。特に新庄のセンスはズバ抜けていた。
「あいつは守備と肩だけでも超一流やな」
 口には出さないが野村は新庄をそう評していた。その新庄が今ボールを追っていた。
 だが打球は落ちた。伊東は既に走っていた。
「走れ!走れ!」
 ナインやファンだけではなかった。三塁コーチも叫んでいた。
 右腕を激しく振り回す。伊東は三塁ベースを回った。
 そしてホームを踏んだ。その瞬間球場は歓喜の渦に支配された。
 これでヤクルトは首位に返り咲いた。飯田の値千金の見事な一打であった。
 しかし阪神も負けてはいない。翌日の試合では痛恨のエラーをしてしまったパチョレックが汚名挽回のスリーランを放ち勝利を収めた。これでまた首位が入れ替わった。
「敵も必死、こういうこともある」
 しかし野村は冷静であった。
「今度の直接対決が天王山やな。そこでいよいよ決まる」
 そ
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