第53話 「民の竈は賑わいにけり」
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さほど制限はされんが、帝国内の国政に口出しはさせんという訳じゃ。当然と言えば、当然じゃろうな」
ビュコック提督が何度も頷いている。
「しかし帝国と同盟内での往来が活発化した場合、混血問題もでてくるはずだが」
レベロ君が言う懸念も頷ける。
「ふむ。そういえば養蜂で、別々同士の蜂のグループを一緒にさせる場合、匂いや気配に慣れさせるためだが、巣の間に新聞紙を挟むらしい。いきなり一緒くたにしてしまうと、より小さなグループが全滅させられてしまうからだ。選挙権も同じだろう。混血問題が表面化してからでも、遅くないと考えているのかもしれん」
「最初から与えられても、ありがたみがない。苦労して手に入れたものなら大事にするか」
シトレ君の発言にロボス君が応じる。
「しかし本気であの皇太子、ここまで考えているのか?」
ホワン君が紙コップに口をつけつつも言う。
どこか疲れたような印象だ。私自身も愕然とする思いだ。あの皇太子、我々よりも一歩も二歩も先に先にと考えている。
「考えている訳ではないと思います。あの皇太子ならば、こうなるだろうという希望を思わせているのです」
ラップ君が言いながら、フォーク君に視線を向けた。
頷いたフォーク君が後を引き受け、口を開く。
「そしてこれこそが、あの皇太子の一番恐ろしいところです。我々自身でさえ、帝国の支配にさほどの懸念を持っていない。恐怖を感じていないのです」
「強制的に農奴に落とされたり、悪逆非道を行わないだろう。そう思わせるものがある」
ヤン君が言うと、キャゼルヌ君も頷いていた。
「……帝国の支配を受け入れつつあるのか」
「しかも無意識のうちに、だ」
レベロ君が肩を竦める。
「以前、ヤン大佐に真綿で首を絞められているような気がすると言いましたが、あの時以上に事態は深刻化していたようです」
キャゼルヌ君の表情が引き攣っている。
誰も表情も引き攣っていた。
「――怪物」
ホワン君が言った。声が震えている。
あの皇太子は一種の怪物だ。
いや、生まれながらの専制君主というものか。
五百年にもわたるゴールデンバウム王朝は、ここに来てルードヴィヒ・フォン・ゴールデンバウムという怪物を生み出した。
「ルードヴィヒという名の皇太子は四人もいたが、なぜか父帝に先だって病死したり、暗殺されたりして、一人も帝冠をいただくことができなかった。とされています」
「それがどうしたのかね?」
ヤン君の言葉にレベロ君が首を捻る。
「ルードヴィヒ皇太子も当然、その事は知っていたでしょう。知っている以上、人はどういう行動をとるでしょうか?」
「亀のようにおとなしく、首を引っ込めて息を潜めていても不思議ではな
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