第53話 「民の竈は賑わいにけり」
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て頷いた。
「ありがとうございます。小官が愚考いたしますところ、最大の問題はあの皇太子の人となりです。もし仮に、仮に同盟が帝国に占領され、吸収された場合どうなるとお考えでしょうか?」
同盟が帝国に吸収された場合か……。
ふむ。
「市民の権利と自由は著しく制限される」
ヤン君が深刻な表情を浮かべ言う。
我々もまた同じように思う。しかしフォーク君は軽く首を振りつつ、問題はそこではないと言いたげな表情だ。
「確かに自由と権利は制限されるでしょうが、同時に帝国の平民と同じ程度には保証されるでしょう。同盟市民も帝国臣民も同列に扱われる。ですがデモやテロが各地で発生しても、実のところ被害を受けるのは同盟サイドであり、帝国本土は被害を受けない」
「高みの見物を決め込むわけか」
シトレ君の言葉にフォーク君が頷く。
各惑星ごとに閉じ込められ、行き来を制限され、その中でテロが横行しても、逃げ場のない同盟市民だけが苦しむ。
「しかしあの皇太子が、そんな状況を良しとするとは思えないが」
「そこです!!」
フォーク君がキャゼルヌ君に向かって、声を張り上げた。
びっくりしたような表情を顔に貼り付けたキャゼルヌ君が、フォーク君を見つめる。
「そうなのです。あの皇太子がそんな状況を良しとする訳がない。ここにいる我々だけではない。誰もがそう思う。思っている。我々はあの皇太子に対して、一定の信頼と信用を寄せているんです。相手は銀河帝国の専制君主でしょう。それなのに信用し、信頼している。これは今までなかった事です。自由惑星同盟の成立を考えれば、ありえない事態でしょう」
フォーク君の言うとおりだ。
私は心のどこかで、あの皇太子を信用している。信頼もしているだろう。テロや略奪暴行などといった非人道的な行為など認めないはずだ、と。
周囲を見回してみれば、誰もが頷いている。
確かに誰もが信用し信頼する専制君主か……。ありえない事態ではあるな。
「しかしそれは別に珍しい事態ではないと思うぞ」
シトレ君がそう言った。
軍人であるなら、敵の名将といった相手に対して、賞賛もすれば信用もするのかも知れない。それがあるからおかしな事とは思わないのだろう。
「だがシトレには悪いが、皇太子に対する信用は、それとは何か違うような気がするな」
ロボス君が首を捻りつつ、考え込む。
「あの皇太子は軍人ではない。帝国宰相であり、はっきり言えば政治家だ。敵国の政治家に対する信頼と信用。異常とは思わんが、不思議な印象がある」
レベロ君も首を捻る。そうやって誰もが首を捻っている状況で、ヤン君が仮に占領されたとして、
「例えば、選挙権と言った権利はどうなるのでしょうか? 民主主義の根幹
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