第53話 「民の竈は賑わいにけり」
[2/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
同盟がデフォルトしたからといって、いったいどこが助けてくれるというのか……。
「このままでは同盟は、各星系ごとに分裂し、小国家群となってしまう」
軍関係者たちの顔色が悪くなったな。
彼らは軍人なのだ。経済関係に疎くとも致し方あるまいが、これからはそうも言っていられなくなる。
「それはいささか大げさではありませんかな?」
ビュコック提督があごを擦りつつ発言してきた。
私はラップ君に向かい頷くと、ラップ君はモニターを操作して、各星系ごとの生産量の分布及び、人口密度を表示させる。
国民総生産は十年前と比べ、約三十パーセント落ちている。
そしてその数字は今も下がりっぱなしだ。
人口に至っては、百五十億いた人間が今では、百三十億人にまで少なくなった。
無論、これは戦争だけが原因ではない。病気で死んだ者や事故などで亡くなった者も含まれているが、問題はそこではない。出産率も低下している。
つまり死ぬ人間が多く。生まれてくる者は少ないという事だ。
「帝国よりも生産効率が高いなどと嘯いていられない」
帝国はいま、高度成長期に入ったと同盟の経済学者たちが、口をそろえて言い出した。
なによりベビーブームだ。人口増加して、その需要を賄うために生産性が増加の一途を辿りだした。こんな時、国というものは活気があるものだ。あっという間に生産効率などひっくり返される。
元々技術力は同程度だったのだ。それが非効率的な規制で阻害されてきた。規制が解除されたら、伸び率は帝国の方が高い。
それを地力というが、はっきり表に出てきた。
「その原因はなにかっ、あの皇太子だ!!」
ホワン君がそう言ってテーブルを叩く。
「専制国家の長点は、急激な方針変更と国力増大が可能だという点。それを見事に体現している」
レベロ君がそれを受けて続けた。
トップの意志が全てに優先する。そう考えれば、今の帝国の優位性が理解できるだろう。
逆に言えば、あの皇太子さえいなければ、ここまで追い詰められる事はなかった。
たった一人の人物に、自由惑星同盟が追い詰められている。帝国から見れば名君なのだろうが、同盟から見れば、悪魔……いや魔王としか思えない。
「我々は未曾有の成長期に突入した帝国と争わねばならないのだ。それがどれほど困難なものか、理解できるだろう?」
「元々国力に劣る同盟ですからな。帝国の国力増大は脅威でしかない」
ロボス君の発言にフォーク君が軽く手を上げて、発言を求めた。
「どうしたのかね?」
鷹揚にロボス君がフォーク君に視線を向けた。
「宜しいですか?」
「うむ許可しよう。皆さんも宜しいですな?」
ロボス君は席についている我々に眼を向け、フォーク君に向かっ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ