第六十ニ話
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が指差した《蝶の谷》の方向は――世界樹。巨大な山よりもさらに巨大な、この世界の中心部にあるラストダンジョン。
……そして、アスナの手がかりがあるかも知れない、とりあえずの目的地でもある。
「《蝶の谷》ってとこで何をするかは知らないが……スイルベーンに行くよりは……」
「その《蝶の谷》に行って、企みをメッセージで領主館に送れば良い、ってことね!」
俺の台詞を奪ってリズが元気良く言い放ってくれる。そこは最後まで言わせて欲しいところだったが。
「……一応、僕も領主館のフレンドに何があるかメッセージしておくよ。……世界樹の方に行けばリーファちゃんにも会えるし……そうしよう!」
……台詞の途中に割り込んで来た、男としての下心に突っ込んであげないのが、優しさというものだろうか。
そうしてサラマンダーたちの増援が来る前に、俺たちは《蝶の谷》へと飛翔を始めた。……図らずも俺たちはキリトと同じく、世界樹にも向かうこととなったのだった。
……そしてショウキたち三人が飛び去った後。彼らが『取り逃した』と勘違いしていた、どこからともなく軽装シルフが姿を現した。
トリックも答えも簡単。使ったのは彼らと同じように《ホロウ・ボディ》である。初心者であるショウキとリズはともかく、同じ使い手のレコンならば気づいてもおかしくはなかったが、《彼》の隠蔽スキルの方が上を行っていたのだろう。
《彼》は《ホロウ・ボディ》で姿を隠しながら、現実世界におけるカメラのような物で、三枚の写真を撮っていた――もちろん、撮った人物はショウキを始めとする三人である。
《彼》はシステムメニューによって、ALO内の掲示板のような場所を開いた。雑談やレアアイテムの在処など、今日も賑わっているその掲示板に、《彼》はおもむろにその撮影した三枚の写真をアップした。そしてこの後、掲示板を見ているプレイヤーに向けて、クエストを発注したのだ。
『今からこの三人のプレイヤーが《蝶の谷》に向かう。それより早く、このパーティーをキルしたプレイヤーに、一人50万コルを与える』――と。
無名のプレイヤーを狩るだけで――レコンは腰巾着としては少し有名だが――破格の報酬設定だったが、それだけではガセだと思う掲示板のプレイヤーは動かない。だが、そのクエストの受注欄に張られていた、シルフ領の紋章……それは、本当の依頼だと証明出来る何よりの証拠だった。
白熱してくる掲示板を興味なさげに閉じると、ショウキたちが去って行った空を見つめて《彼》はニヤリと笑って呟いた。
「……It`s show time」
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