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三年目の花
5部分:第五章
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頓堀か」
 誰かがここで気付いた。
「もしかすると」
「知っとるんか!?」
「ああ、実はな」
 そこでその時道頓堀にいた者が話をした。カーネル=サンダースの話を。話が終わった時そこにいた者は皆顔を青くさせていた。
「・・・・・・それホンマの話か!?」
「わしも信じられへんけれどな」
「じゃあもしかして今の阪神の不幸はケンタッキーのおっさんが」
 昔から甲子園には魔物が棲むと言われている。だがカーネル=サンダースとなると話はさらにややこしくなる。
「どないしたらええやろ」
「許してもらうしかないやろ」
「どないしてや!?」
「そうやなあ」
 ファン達は考えた。とにかく道頓堀に入れたのがまずかった。こうなったら引き出すしかない。
 早速ダイバー達が飛び込んだ。しかし人形は遂に見つからなかった。おそらく他の場所に流れてしまったのだろう。
 だがファンはそうは考えなかった。これはカーネル=サンダースが甲子園に移り阪神に祟っていると考えたのだ。そしてその呪いこそ今の阪神の不調だ。
「あんなことがあってはならん」
 こうして道頓堀のカーネル=サンダースの人形には施錠が施されたのだ。
 それだけではない。千日堂のすっぽんも亀山に通づるという理由で警戒されていた。とにかく大阪、そして関西は阪神の優勝を指折り数えて待っていたのだ。
 阪神圧倒的有利の雰囲気があった。ヤクルトは流石にもう無理だと思われた。
「ヤクルトもよくやってるけれどな」
「阪神には勢いがある。これはもうどうしようもないよ」
 世間はこう言っていた。流れは確実に阪神のものであった。
「流れか」
 野村はここに気付いた。
「勢いをこちらに引き寄せるには」
 彼はここで広沢の言葉を思い出した。
「救世主」
 それが出れば流れは変わるかも知れない。流れが変わればひょっとする。打線には自信がある。阪神投手陣といえど攻勢を仕掛ければ押し潰せる。野村はまだ諦めてはいなかった。
「しかし誰がおるんや」
 打線はいい。問題は投手陣だ。ならば救世主はピッチャーであるべきだ。長い間苦しんでいた伊東も高野光も出した。彼等は確かによくやっている。しかしそれだけでは駄目だ。もう一人必要なのは前からわかっていたことなのだ。
 だがいない。考えてみたが誰も思いつかなかった。
「いや」
 しかし野村はここで気付いた。
「あいつがおったわ」 
 彼はここで電話を手にした。程なくしてスタッフの一人が出て来た。
「おう、わしや」
 野村はスタッフに対して言った。
「あいつはいけるか」
「彼ですか!?」
 そのスタッフは電話越しながらも驚いていた。
「そうや、いけるかどうか聞いとるんやが。どや」
「そうですね」
 彼は明らかに戸惑っていた。だが暫くしてこう言った
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