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乱世の確率事象改変
少女の作る不可測
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「せ、先遣部隊二万が……たった一日で壊滅、敗走……?」

 行軍を開始した本隊にて一人の兵からの報告を聞いた七乃は口をあんぐりと開け放っていた。
 為されたモノは余りに異常な報告。先遣隊として放った兵の数は二万。彼女は長期の戦を想定してじわじわと削っていく腹積もりであった。
 情報収集も申し分無く、駐屯している敵将は張飛と徐晃の二人であり、その兵数も合わせて一万に満たなかったとのこと。敗走後、本陣へと戻ってきた兵もいるが、その数は三千弱程度であった。
 確かに派遣した将は年若く経験の少ないモノを当てた。本城にいる紀霊は人質であるじゃじゃ馬姫の監視と奪還対策の為にここまで連れてくるわけにもいかず、他の老練な将を使うにしても同志である夕の計画の為に本隊と共に行動させるしかなかった。
 しかし、如何に将の能力が低かろうと、二万の兵が通常の戦で、それもたった一日で壊滅して敗走まで至る事などありはしないのだ。

「しょ、詳細は?」

 気を取り直した七乃は背を伝う冷や汗に不快感を感じながらもどうにか言葉を紡ぐが、兵士から聞いた詳細内容にさらに驚愕してしまった。
 城まで張飛隊が引き返したとの情報から機とみて攻め入るも四分の一の数の徐晃隊に翻弄され、その夜に兵の不満を抑える為に夜襲を仕掛けたが秘密裏に引き返してきていた張飛隊との挟撃に遭って甚大な被害を被る。最後に止めとばかりの執拗な追撃から陣への夜襲返し。
 中でも異常だったのが奇襲に参加した袁術軍の兵士の大半が寝返った事。
 戦場の最中に、それも将に対して事前の打ち合わせや手引きがあったわけでもないというのに兵士だけが寝返り自軍を攻撃し始める、そのような異質な出来事は七乃にとっては初めての事態であった。
 顔を真っ青に染めた七乃は同志たる少女の顔を思い浮かべて涙声を出す。

「夕ちゃん……さすがにこんな事は想定の範囲外ですよぉ……」

 夕から聞いた忠告は多々あるも、それさえも越えてしまった状態となっている。
 本来であれば、長い戦の為にそこそこの戦闘を繰り返し、劉備軍本隊の到着と同時に一度大きく攻めてから膠着、機を見て孫策軍を呼び寄せてぶつけてから計画を遂行するはずであった。
 就任したてでは兵糧の確保も新参兵の強化も難しく、長い戦では音を上げるのは相手方であるのは言うまでも無い。
 その重要な点が二つとも抑えられた。二万の兵を養える兵糧も、ある程度訓練を積んだ新参の兵も、どちらも一挙に劉備軍は手に入れた事となる。
 少し、七乃は劉備軍主要人物達の情報を頭の中から引き出し始める。
 劉備はただの傀儡、祀り上げられた神輿……では無い。関わった人を動かす力を持つ稀有な存在。戦で不確定要素となる人物であり、捕えて従わせなければ後々まで被害の及ぶ猛毒、従わせる事が出来れば万能の
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