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三年目の花
1部分:第一章
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なかった。
「もっとええキャッチャーが必要や」
 ヤクルトの打線は揃ってきている。守備は池山のそれは雑だが運動神経がかなりいいのでショートは問題ない。セカンドの笘篠賢治はいい。ニ遊間はしっかりしている。サードのハウエルも普通に守備範囲こそ狭いが肩はそこそこある。ファーストの広沢が不安だがニ遊間がしっかりしていれば問題ない。
 外野は飯田哲也がいる。キャッチャー、セカンドとめまぐるしくコンバートしていたがその俊足と強肩を買った。彼をセンターに置けば守備はかなり固くなる。レフトには荒井幸雄だ。そして問題の秦はライトにした。
「守備は不安やがな」
 だがその打撃を買った。何よりも彼は貴重な左打者である。勝負強さと共にそれを考慮した。
 攻撃にもなかなか秀でていた。しかしそれだけでは勝てない。ヤクルトの弱点はそれではないのだ。
 投手である。人材がいなかった。
 エースには岡林洋一がいる。そして西村龍次。伊東昭光に内藤尚行。先発は数はいた。だが岡林以外は確実な人材はいない。甚だ心許なかった。
 それをカバーするにはやはりキャッチャーであった。その弱体投手陣を上手くリードし、勝利に導くことのできるキャッチャー。野村はそれ以上のものを考えていた。
「野球はまずキャッチャーからや」
 キャッチャー出身である彼の持論であった。野村はキャッチャーをリードするだけの存在とは考えていなかったのだ。
 リードやキャッチング、肩だけではない。グラウンド全体を見ることができ、的確な指示を出せるキャッチャー。文字通りの『司令塔』を欲していたのだ。
 それに白羽の矢を立てたのが古田敦也であった。野村は彼を徹底的に鍛えた。
「わしはグラウンドにまで指示を出すことはできん。あとは選手の問題や」
 その指揮官である。彼の采配や考え方を叩き込んだのだ。
 送球フォームもチェックした。打撃も。時にはロッカーの抜き打ち検査までしている。キャッチャーの在り方を教える為である。

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