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八条学園怪異譚
第五十九話 時計塔の話その六

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「すき焼きも安くつくから」
「しかも量もですよね」
「一杯食べられますよね」
「味がよくてで安くて一杯食べられる」
 茉莉也は今度はこの三つを同時に出してみせた。
「それなら文句ないでしょ」
「はい、輸入肉は調理の仕方次第ですね」
 ここで言ったのは愛実だった。
「美味しくするのは」
「そこでそう言えるのは流石ね」
「うちのお店も輸入肉ですから」
 食堂の娘の言葉である。
「ですから」
「そういうことね」
「はい、輸入肉は確かに固いです」
 愛実はこのことを熟知していた、やはり食堂で使うからだ。
「けれど重奏とかに漬けて」
「そうして柔らかくするのね」
「それでいいんです、他にはお野菜とか酵素に漬けるやり方もありますよね」
「パパイアの酵素とかね」
「それでステーキだと豚のベーコンを周りに巻いて」
「肉汁も出すのね」
「これでステーキでも安く済みます」 
 安く美味しく食べるにはどうすればいいか、愛実はよくわかっていた。それで今こう話すのだった。
「ステーキ定食とか」
「そこで定食なのね」
「はい、うちのお店の人気メニューの一つです」
 そうなっているというのだ。
「定食にしては高いですけれど」
「成程ね、けれど考えてるのね」
「美味しいと売れますから」
 だから考えているというのだ。
「うちにしても」
「そうなのね」
「うちもステーキサンド売ってます」
 今度は聖花が言って来た。
「私のお家も重曹を使って柔らかくしています」
「重曹って便利ね」
「そうですね、何かを柔らかくしようと思えば」
 重曹だというのだ。
「有り難いものですよ」
「そうなのね、じゃあ私もね」
「先輩もお料理に使われるんですね」
「黒豆とかには前から使ってるけれど」
 これからはというのだ。
「お肉にもね」
「使われるんですね」
「そうするわね、とにかく輸入肉はね」
 それはというのだ。
「仕込み次第なのよ」
「ましてすき焼きのお肉は薄いですし」
「普通にお鍋に入れたらいいですよね」
「後は味付け」
「それですね」
「そう、あとすき焼きの作り方は」
 それはだ、どうかというと。
「関西風よね」
「ですよね、すき焼きの作り方も関西と関東がありますけれど」
「やっぱり関西風がいいですよね」
「お醤油は薄口醤油で」
「それがいいですよね」
「というかね、関東のお醤油は辛いし」
 関西の薄口醤油に比べてだ、関東の醤油は確かに辛い。これはうどんや蕎麦のつゆにも端的に表れている。
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