第九十二話 百腕の巨人その九
[8]前話 [2]次話
「御覧の通りです」
「そうなりましたね」
「これで残るは二人です」
「あと少しだというのに」
声は大石の言葉を受け無念そうに言った。
「貴方達はどうして」
「決まっています、この戦いは無益なものですから」
「だからですか」
「はい、私達は何としても」
この戦いを終わらせるというのだ。
「そうさせてもらいます」
「そうですか」
「私はやがて」
大石は声にさらに言った。
「私自身も戦いから降ります」
「戦いを終わらせる為に」
「はい、あえて」
そうするというのだ。
「そうさせてもらいます」
「そうなのですか」
「ではです」
毅然としてだ、声に言うのだった。
「その時に私も最後の戦いを行いますので」
「用意はしています」
「それだけです。では」
こう言ってだ、そしてだった、
大石はコズイレフに顔を向けてだ、そのうえでだった。
彼はだ、こうコズイレフに話した。
「それではもう」
「はい、僕は戦いから降りました」
「では今から」
「帰ります」
家にだ、そうしてだというのだ。
「それでゆっくりと寝ます」
「それで休んで」
「明日からは普通の学生です」
その立場に戻ることもだった、コズイレフは自分の口で言ってそのうえで楽しく笑ってこうも言ったのであった。
「それでいいです」
「そうですか、では」
「帰りますか」
「立会い人は最後まで務めます」
つまりだ、コズイレフが家に帰るその時までだというのだ。
「ご一緒させてもらいます」
「では」
「途中何処かに寄りますか」
大石は温和な笑みでコズイレフにこうも言った。
「そうしますか」
「そうですね、それではコンビニに寄って」
そうしてだとだ、コズイレフは閃いた顔で大石に話した。
「お酒を買って。おつまみも」
「お酒は何を」
「ウォッカを」
「それですか」
「やはりお酒といえば」
ロシア、もっと言えばコズイレフ自身にとってはというのだ。
「それでしょう」
「そうですか、貴方はですね」
「神父さんは違いますね」
「お酒といえば血です」
この二つは日本人では少し戸惑いを覚えるつながりだ、しかしキリスト教を知っていればわかる。それでコズイレフも頷いた。
「それですね」
「はい、ワインをです」
飲むというのだ。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ