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八条学園怪異譚
第五十八話 地下迷宮その十五
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「お酒がない時好きなだけ飲めますし」
「いいですよね」
「それで商売をしようとは思わんのじゃな」
 博士は二人が客商売の家の娘であることからこのことを問うた。その尽きることのない酒で商売をするかどうかを。
「そうした気は」
「ないです、私は」
「私もです」
 二人共無欲さを出して答えた。
「というかああしたものってそういうことしたらすぐに尽きますよね」
「お酒が出なくなりますよね」
 童話でよくあるパターンからだ、二人共こう考えているのだ。
「ですからそういうことは」
「しないです」
「そうなったら元も子もないです」
「変に欲出すとよくないですから」
「ふむ、賢明じゃな」
 博士は二人の言葉から愛実も聖花も無欲でしかも愚かでないことを察した。
「それでいいのじゃ」
「無欲でいることですね」
「変に欲を出さないことですね」
「欲は人に必要じゃが変に出すとな」
 それでどうなるかもだ、博士はこのことも哲学的に話す。
「よくはないのじゃ」
「そこから失敗しますよね、童話ですと」
「それで元の木阿弥になって」
「だからじゃ」
 それでだとだ、また言う博士だった。
「そうしたものは売ることに使ってはならぬ、打出の小槌は無欲な者に与えられるものじゃ」
「そこなんですか」
「無益な場合にですか」
「そういうことじゃ、二人共店のことは頑張ってもじゃ」
 それでもだというのだ。
「変な欲は持って欲しくないのう、わしは」
「わかりました、そのことも」
「頭の中に入れておきます」
「頼むぞ、ではな」
 こうした話をしてだった、一行が研究室に戻ると。
 もう宴会の用意が出来ていた、その彼等にろく子が笑顔で言って来た。
「お待ちしていました、では」
「あれっ、見つかったかどうか聞かないの?」
「泉のことは」
「ここで見つからなくとも最後ですね」
 ろく子はこの辺りの事情を知っていて言うのだった。
「ですからそれは」
「そうなのね、有り難う」
「それじゃあ」
「そういうことで。あと私達はそうしてタメ口の方が」
 それがだというのだ。
「しっくりしますので」
「それで私達もそうしてるけれど」
「妖怪さん達の方が長生きしてるけれど」
「それでもですよ。お友達ですから」
 だからだと言うろく子だった。
「普通の喋り方の方がしっくりきます」
「そうなのね、じゃあ」
「これからもね」
「この喋り方でいきましょう」 
 つまりタメ口だというのだ、そうした話をしてだった。
 妖怪達は酒やつまみを色々と出してきた、今日の酒は濁酒だった。つまみは柿の種だのピーナッツだの軽いものだった。
 そうしたものを前にしてだ、愛実は聖花に言った。
「予想してたけれどね」
「ええ、濁酒だろうってね
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