第五章
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批判に礼賛する愚劣な提灯持ち共との決定的な違いである。彼は常にパリーグ、そして野球界の事を考えていた。そしてそれを見て行動していた。
そのような人物であるから彼を慕う者は多かった。そして彼はカリスマ性だけでなく絶大な力も持っていた。
おそらく長い我が国の野球の歴史で帝王学を実践したのは彼だけであろう。その力は裏の世界の人間ですら逆らえない程のものであったという。
当時は選手の獲得等で不明瞭な金が動いていた。これはそういう時代だったからである。別に彼だけでなく多くの球団も大なり小なり同じであった。とある球団などはいまだに他のチームからそうしたやり方で選手を犯罪まがいの方法で強奪したりしているようであるが。
その戦績は見事である。リーグ優勝は一リーグ時代と合わせると十一回、日本一二回、監督通算一七七三勝、勝率六割九厘は歴代一位である。これだけの将は最早出ないだろうと言われている。
その鶴岡が今永田と共に試合を観戦している。鶴岡の目はテレビに映し出される試合に釘付けだった。
永田はその鶴岡を見ていた。ワンマンな彼もこの人物の言葉なら問題無いと思っていた。
試合が始まった。まずは一回、両者共無得点であった。
西本は二回途中で動いた。マウンドにエース小野を投入してきた。
「昨日の秋山の時に似ているな」
鶴岡はボソッと呟いた。
「だが状況が違う。これは吉と出るか凶と出るかわからんな」
永田はその言葉を耳に残した。そう、この時点では試合はまだ動いていなかった。
試合が動いたのは六回だった。表の大毎の攻撃で榎本がツーランホームランを放ったのだ。
この先制点にファンは狂喜した。西本も微笑んで先制アーチを放った榎本を迎える。
永田はこの時勝利を確信した。これで自慢の打線は爆発する、そして小野も大洋打線を僅か二安打に抑えていた。
そう思っていた。だが勝利の女神の気紛れさを彼は忘れていた。
大洋打線は確かに打率は低かった。しかしその集中力は凄まじかった。大毎側はそれを忘れていた。小野もこの程度なら楽に抑えられると油断したのであろうか。
その裏であった。大洋の数少ない中心打者である近藤和彦と桑田が連打を放つ。これで同点となった。
永田もファン達も沈黙した。そして七回裏にはシーズン打率僅か二割二分六厘の近藤昭仁と二割一分の鈴木武がこれまた連打を放ち逆転した。これには皆流石に唖然とした。
この年三原は『超二流』という造語を造っている。
「うちのチームは他のところみたいに一流の選手は少ない。しかし打っても守っても超二流の選手が揃っている。彼等が力を合わせて一流の選手を超えていくん三原の言葉通りその超二流の選手たちが活躍する。第一戦の金光然りこの試合の近藤、鈴木然り。そして大毎を追い詰めていっていた。そして試合はい
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