SAO編
序章 はじまりの街にて
Ex3.心配以上に信頼を
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達では無いのですよ?」
その言葉に、俺はまた衝撃を受けた。
――心配はする。しかし、それ以上に信頼している。
強いな、と思った。俺はまだ、そこまでの関係を東雲と築けてはいない。
普段忙しくて家にいないとは言っても、それでもこの人たちは東雲の《親》なんだ。
絆の強さには敵うわけないとは解ってるけど、それでも悔しいと思ってしまった。
東雲の両親が来てから一時間ほどしてから、病院から簡易点滴セットが送られてきた。
なんでも、SAOに囚われた人は東雲だけではなく、この付近でも結構人数がいるらしい。
その全員を看護施設へ移送させるための準備の間の緊急策として、各被害者の家に救急隊員が配って回っているらしい。
救急隊員だという人は、東雲に点滴を取り付けて、点滴の簡単な説明を俺たちにしてから出て行った。
これは後で知った話なのだが、ウチの県には五百人近くもSAOに囚われた人がいたらしい。いきなりそれだけの人数を、更に全員が意識不明の上、長期間の介護体制を可能としている施設に出来るだけ早く移送させるというのは、かなり厳しいことだろう。
しかし、そこで救世主が現れた。
三十代前半という若さで県議会議員になったとある人物が中心となり、県内のSAO虜囚者の移設に積極的に取り掛かった。
準備に人手が足りないことをボランティアや地域団体に呼び掛けることで解決し、移設先の準備をたった一日足らずで完了させたという。
このとき、その人物はある方針を立てた。
それは、SAO虜囚者の移設を全員同時に行うというものだ。
これには流石に反対した者もいたらしい。事は一刻を争うのだから、準備が出来た所に順番に移設すれば良い、そちらの方がスムーズにことは運ぶことが出来る、と。
それに対してのその人物の言い分に結局は反対派は押し切られたという。曰く。
――SAO虜囚者は基本的に若者が多い。つまり移設を願うのは被害者のご両親だ。早くしっかりと介護できる施設へ連れて行きたいと思うのは誰もが一緒だ。そこへ順番にと言われたら最後の者はどう思う?
誰だってこの状況に混乱している。
だったら少しでもその状況に救いを、安心感を求めるのは人間として当たり前だろう。
この場合だったら、出来るだけ早く病院なり介護施設なりに移設出来れば、少しは安心ができる。心が保てる。
しかし、それに順番があったら?
最初の人はいい。だけど最後の方の人は?
訳の解らない状況で、いつ死んでしまうかもしれない我が子を見ながら自分の番を待つ。それはどれ程に苦しいことだろうか。
そんなことを言われた同時移設反対派は、何より自分たちが県民に非難されることを懼れた。
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