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僥倖か運命か
第四章
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なる。だが神ならぬ身の彼はその事に気付いていなかった。もし気付いていたとしてもそれはどうすることも出来なかったであろう。既に彼も三原の魔術に捉われていたのだから。
 この敗戦に最も危機感を募らせていたのは西本だった。選手達はまだ一敗、とその表情は明るい。だが彼の顔は暗かった。そのへの字の口をさらに厳しくし試合終了後のグラウンドを見据えていた。
「打てんか、秋山は」
 西本は一人呟いた。既に三原はグラウンドを引き揚げている。そしてマスコミ達に囲まれながら試合終了後のコメントを行なっているだろう。おそらく彼等もその魔術に捉われだしているだろう。
 打線の調子が下降線であるのは彼自身がよくわかっていた。それが出た一面は確かにある。打線は水物という。好不調の波は投手陣に比べて比較的大きい。打線のチームにとって最も恐ろしい事は不調の時に絶対的な投手が現われる事だ。そしてそれが今だった。秋山を打ち崩す事は普通にやったのでは困難であろう、そう考えた。
「ここはこれまで通りのやり方やったら負けるな・・・・・・」
 彼は思った。そして次の日の試合に備えその場を後にした。

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