§36 智慧の女神はかく語る
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は、対戦者の方。
「馬鹿な!? 聖槍だと!?」
黎斗の呪力に反応した槍は砕け散り、内側からもう一つの槍が姿を見せる。こちらも年紀を感じさせる一品だが、纏う気配は明らかに異なる。神々しさと禍々しさを内包した、神にのみ振るうことを許された神槍。
「はぁ!!」
「しまっ……!!」
一瞬拮抗したアテナの鎌と黎斗の槍だが、予想外の事態に驚愕したアテナを必死な黎斗が押し込むことに成功する。宙高く舞う漆黒の鎌。
「小癪な!!」
アテナの瞳が不気味な色を灯すが、瞳に異能が宿っているのは黎斗にとっても同じ事。邪眼がアテナの闇を払い、石化の呪いを解き放つ。
「あああああああああああ!!!」
「がぁ!」
今度は大樹に黎斗がアテナを押し付ける。黎斗の左手が、アテナの口へ侵入する。
「んー! んー!!」
「全てを忘れよ。全てに興じよ。我は心を汚す者。一時の酔いよ、全てを狂わせ破滅へ導け!!」
「ん、んー!! んー!!」
アテナの口から、彼女の必死な抵抗が漏れて伝わる。左手を食いちぎらんと暴れるも、ロンギヌスの治癒力が黎斗の傷を癒していく。
「ああああああああ!!」
「ーーーーーー!!!」
叫ぶ黎斗の左腕が、か弱い少女を、蹂躪する。彼女の想いを塗り替え、彼女の力に鍵を掛け、彼女の記憶に異物を捩じ込み書き換える。必死な神の抵抗も、口から直接注ぎ込まれる呪いに対してはあまり効力を現さない。ビクンビクンと痙攣していた女神の身体が、少しずつ動くのをやめていく。陥落まで、もう一息か。
「んー!!」
「うわっ!!」
闇が、爆ぜた。女神アテナの最後の矜持、というべきか。爆風に飛ばされた黎斗はあっけなくアテナから引き離される。
「マズっ……!!」
距離を離されるのは拙い。完全に終わるまで洗脳を続けなければ。そう思い相手の方を見ると、何事も無かったかのように立ち上がる女神。
「マジかよ……効いてないのか……?」
「うぅ……」
黎斗の脳裏を絶望が走るが、アテナがふらついているのを見て、考えを改める。大丈夫、効いていないわけではない。ならば、黎斗の取れる手段はただ一つ。
「おおお!!」
気合を入れて全力疾走。どういうわけか、自分の傷は全て癒えている。ならば、全力で走れば逃げ切れるかもしれない。もう呪力は一割も無い。武芸の心得も皆無な黎斗がアテナと打ち合えるはずもない。戦うことは不可能だ。
「頼む、追ってくるなよ……!!」
黎斗の願いが通じたのだろうか。果たしてアテナは追っては来なかった。両者が再び会いまみえるのは、気の遠くなるほどの年月を重ねた、遥か極東の島国にて――
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