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魔王の友を持つ魔王
§36 智慧の女神はかく語る
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もない。第一、人間だったらここまで必死に逃亡する必要もない。

「うっそ。アテナさんや。早すぎだろ……」

 絶望しかない。こちらは満身創痍であちらは無傷。最初の権能は未だに完全把握出来ておらず、呪力消費も激しい。ここで使えば十中八九呪力切れを起こす。こんな森の中で呪力切れを起こそうものなら身体強化も出来ず森から出られなくなる。狩りも出来なくなるので食料も無くなる。待つのは死だ。つまり、使える手札(チカラ)はサリエル、ディオニュソス、ラファエルのみ。

(どうしようもねぇ……)

 ここまでか。一瞬諦観が頭をよぎるもその考えを振り払う。

(日本に、帰るんだ)

 既に心身ともに色々なことでずたぼろだけど、それだけは諦めるわけにはいかない。

「意を決したか。良い顔をするではないか。それでなくては妾の相手は務まらぬ」

「何でここがわかった?」

 微笑むアテナの顔が一瞬にして呆れを含むものに変貌する。

「……貴方はふざけているのか? 貴方の逃げた方向へ妾はそのまま向かっただけだぞ? 貴方が智慧を絞り逃亡したのか、と思い逃亡先を推測しようと追ってきたのだ」

 一端口が閉じられる。怒気を孕んだ声が、黎斗の耳朶をうつ。

「ところが貴方がここにいるではないか。妾は嬉しかったぞ。逃亡を辞め、妾と戦う覚悟を決めてここで待っていたのかと。だがその言い方では違うようだな。これで妾を撒けると本気で思っていたのか? 妾を侮辱するのも大概にしろ神殺し!!」

「うっ!」

 勢いよく振るわれる鎌。何気ないその一振りは衝撃波を起こし、黎斗を背後へ吹き飛ばす。勢い良く大樹に叩きつけられた黎斗は一瞬呼吸が止まり意識を失いかけた。

「くっ……」

 身体能力、戦闘経験、権能の攻撃性能。全てにおいて圧倒的に女神(アテナ)は黎斗の数段先をいっている。勝ち目など、ある筈が無い。だが、だからと言って己が命を諦めることなど出来はしない。

「経口摂取って言って、れーと達神殺しに術を掛ける時の手段の一つよ」

 思い出すのは義母(パンドラ)の言っていた言葉。そして、ディオニュソスの権能、葡萄酒の誘惑(マイナデス)。これに賭ける。

「うおおおお!!」

 僅かな呪力を足に込め、アテナに突撃。

「ふっきれたか。採った選択肢が突撃とはな。ならば妾の武を今一度貴方に見せよう!!」

 アテナの鎌が振るわれる。それに対するは右手に持つ木の棒、もといおんぼろな槍。こちらにも呪力を込め、思いっきり鎌にぶつける。砕けても良い。槍と右腕で鎌という脅威を数秒、抑えるのが目的なのだから。

「……久々の世界か……」

 声がした、気がした。文字通り生死が懸かっており必死な黎斗は気付かない。気付いたの
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