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魔王の友を持つ魔王
§36 智慧の女神はかく語る
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気な発言だな?」

 はたしてそれは揶揄か、挑発か。笑いを含んだ彼女の声はそれらよりも、疑問の色が強い。彼女が思うのは、初めて彼と戦ったあの日――





――数百年前。欧州のとある森林。

「くそっ!! なんだよこれ!?」

 黎斗は必死に走って逃げていた。後ろを振り向き一睨み。彼の両目は淡く輝き、周囲の呪術を消去する。彼の瞳は彼に許可のない術の発動を許さない。襲いくる蛇は一瞬にして存在を失い消滅した。そのまま更に駆け抜ける。

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 流浪の守護を展開、これで追跡者は黎斗の痕跡を辿ることは叶わない。目視以外の手段で黎斗を捉えることなど出来はしない。たとえ相手が智慧の女神(アテナ)だとしても。

「ぐっ……いたた……」

 腹から流れる血がようやく止まらない。なんだあの女神様、滅茶苦茶強いではないか。もう泣きたい。二振りの剣を持って挑んだが鎧袖一触だった。五体満足で逃亡できたのは一種の奇跡だろう。避けるタイミングが一秒でも遅かったら左手などは身体から離れてどこかへ飛んで行ったに違いない。

「素人の付け焼刃程度では神の相手になりはしない、か」

 半世紀くらいは剣術をひたすら学んでいたのだが、まだ絶対的な壁がある。大騎士とも数号程度なら打ち合える力量になったのだが、それでは甘いのか。

「無理ゲーだろおい」

 はぐれ魔術師を探して弟子入りしてみるか、などと現実逃避をしつつ周囲に追跡者が迫っていないことを確認、ようやく腰をつけて一休みだ。

「残り呪力も三割強ってところだしなぁ。無理。どうあがいても勝てん。無事に逃げ切れるといいんだけど」

 息を整えようとしている黎斗の頭上を数羽の梟が飛んでいく。アテナめ。とうとう人海戦術で探し始めたか。無事に逃げ切るにはどこまで行けば良いのだろう? 

「ラファエルと連チャンになったのが運の尽き、ってか?」

 影から古ぼけた槍を取り出す。天使(ラファエル)を殺めた時に彼が持っていた槍だ。彼は後生大事に持っていたが、黎斗にはこれがそんな価値ある物だとは思えない。柄は凸凹で黴が生えている。変色もしているしひび割れもある。穂先はといえば錆びつきところどころが欠けている。少し力を入れるだけでぱらぱらと粉が落ちてくる始末だ。これで重要なものだと思えようか、いや思えない。ラファエルが大事にしていたから何かあるのかもしれない、と思い持っているだけだ。

「はぁ。これ振ったら相手が吹き飛ぶ、とかないかなぁ……」

 脂汗を拭いながら、手で弄ぶ。あの梟がいってそれなりに時間が経過した。そろそろまた強行軍を始めよう。そう思った矢先。

「見つけたぞ」

 目の前には可憐な美少女。人を超越したような美貌の少女が人であるはず
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