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八条学園怪異譚
第五十七話 成長その十七
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「奥が深くて」
「食べものだからね」
 食べるものはどれも奥が深い、それはまさにそれぞれが一つの宇宙であると言っていいまでである。
「深いわよね」
「色々な種類があってそれぞれの焼き方があって」
「どんどん増えていくしね」
「はい、難しいです」
 それがパンだというのだ。
「奥が本当に深いです」
「そうよね、じゃあ」
「パン一本でいった方がいいでしょうか」
「それは聖花ちゃんが決めることよ」
 愛子はこの時はあえてこう言った、助言をすることはせず。
「それはね」
「司法試験も通るかパン一本でいくかは」
「確かにパンを焼ければそれだけで生きていけるわ」
 就職にも困らないというのだ、美味しいパンを焼けるということはそれだけで素晴らしい技術なのであるから。
「けれどね。法律の専門家でもあったらね」
「プラスアルファで、ですね」
「ええ、いいわ」
 余計にというのだ。
「聖花ちゃんにとってね」
「私もそう思っていまして」
「けれど両立はね」
 難しい、それもかなり。愛子は言葉の行間にこの言葉を入れていた。口では出すことはしなかったにしても。
「難しいわよ」
「それはわかっているつもりですけれど」
「それでもあえてなのね」
「そう思っています、ですが」
 それでもだとだ、聖花はこのことは絶対とした。
「パン屋さんとして確かでないと」
「駄目っていうのね」
「司法試験も合格したいですけれど」
 それでもだというのだ。
「まずはパンです」
「そう思ってるのね」
「私は」
「じゃあまずはパンでね」
 愛子は聖花の言葉をここまで聞いて言った。
「聖花ちゃんは生きてね」
「そうします」
「二人共ある程は決まってるのね」
「ある程度だけれど」
「ぼんやりとですが」
「それでも決まっているといないのとでね」
 ある程度にしてもだというのだ。
「それでかなり違うわ」
「そうなのね、じゃあ私達はお料理で生きる」
「そうしていくのね」
「お料理が出来ることは強いから」
 愛子はこのことは間違いないと言い切った。
「何処でも生きていけるから」
「それだけの技術なのね、お料理って」
「パンも」
「ええ、二人共包丁一本でやっていけるわ」
 二人にこうも言う愛子だった。
「それこそね」
「そう言うと何か何処かの漫画雑誌のさすらいの主人公みたいね」
「和食とかでね、料理勝負をしながら流離うのよね」
 二人は包丁一本という言葉からそうした漫画を連想して述べた。
「相手は料理界を裏から支配しようとする闇の組織とかでね」
「強い料理人が四天王とか五人衆とかいるのよね」
「ホークスの主力みたいな表現でね」
「出て来るのよね」
「むしろホークスの表現がそうした漫画みたいっていうか
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