SAO編
序章 はじまりの街にて
10.本当のGAME START
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か浮かばない。上向きな考えを出せる理由がどこにも無い。
心が弱くなる。精神が磨り減る。自信が無くなる。
俺は、今のそんな感情に一つだけ心当たりがあった。
それは、祖父と対峙していたときにしか感じなかった感情。祖父以外では感じなかった感情。
《恐怖》。
俺は今、この状況に恐怖している。
自分が何も出来ずに死ぬかもしれないという状況に恐怖している。
あの三人に、祖父が一番怖いからそれ以外は怖くは感じないと言ったくせに、確かに恐怖している。
――情け無い。
そして、悔しい。
今まで全てを犠牲にして鍛えてきたこの身体は何の為だったのか?
祖父の容赦の無い攻撃を避ける為に培ったこの洞察力にもう意味は無いのか?
あの三人にも、まだほとんど教えることも助けることも出来ていないというのに!
「俺は――何の為に生きてきたというんだ!?」
自分の腕さえも見えない暗黒の中で、俺は叫んだ。
もしかしたら此処には意識だけしかなくて、口すらなかったのかもしれないが、それでも俺は思い切り叫んだ。
「俺は……生きたい! 生きていたいんだっ――――」
最後に大きく叫んだとき、俺は光に包まれた。
「キリュウさん!」
「――!]
次に俺の視界に入ってきたものは、先ほどと同じ場所。はじまりの街の外周にある草原だった。
俺はそこに、意識が消える前と同じく、直立姿勢で立っていた。
「ああ、よかった。みんな戻ってくることが出来て……」
――レイアの、声……? みんな?
俺は視線を少し下げる。
「……あ」
そこには、ルネリー、レイア、そしてチマ、三人がいた。
「……お前たち、俺も……戻って、来れたのか……」
無意識にそんな言葉が俺の口から漏れた。
俺の言葉を聞いた三人は、一瞬きょとんとした顔をして、三人とも涙を溜めた瞳で笑って言った。
「はい! 帰って来れました!」
「もう、すっごくビビったッスよ〜。いきなり視界が暗くなって……で、戻ってこれたと思ったら誰もいなかったッスし!」
「うん。……それにキリュウさんは特に時間がかかっていた見たいで、すごく心配しました」
その三人の笑顔を見たとき、俺は確かに安堵していた。
そして、その安堵感が先ほどの恐怖をはっきりとさせる。
確かに俺はあのとき恐怖していた。
何も出来ない自分に、三人を助けられない自分に、今までの鍛錬が無に帰すかもしれない状況に。
「…………っ」
故に、俺は認めよう。このゲームを甘く見ていたということに。
認めよう。この世界を甘く見ていたということに。
認めよう。俺は強くなんてなかった。誰かの意思で
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